近年、官公庁を中心に全国で進められている「ユニバーサルツーリズム(以下、UT)」とは、高齢であることや障がいの有無等にかかわらず、すべての人が安心して楽しめる旅行のことです。
兵庫県では、UTに特化した条例として全国初となる「UT推進条例」を、令和5年4月1日に施行しました。
―ひょうごユニバーサルな観光地
UTでは、施設や場所といった捉え方ではなく、地域という面での取り組みが必要です。そこで、地域を挙げてUTに積極的に取り組む観光地を支援する「ひょうごユニバーサルな観光地づくり支援」が実施され、令和6年9月には県内3地区が「ひょうごユニバーサルな観光地」として選定されました。
選定されたのは、豊岡市の城崎温泉、新温泉町の湯村温泉、丹波篠山市の3地区で、このうち2地区が但馬地域です。
―それぞれの取り組み
選定された城崎温泉では、県が条例を制定する前、平成28年から県とともにUTの拠点づくりを進めてきました。
城崎温泉といえば外湯めぐり。7つの外湯をめぐり、それぞれ異なるご利益や趣を楽しみながらはしごするのが醍醐味です。その外湯めぐりをすべての人が楽しめるよう、障がいのある人とのモニターツアーを重ねてきました。温泉での入浴介助サービスの開始、車いすに座ったままでも着用できる浴衣の開発、電動車いすのレンタルなどに取り組んでいます。
「ユニバーサルな観光地」への選定を機に取り組みは本格化し、現在はコンシェルジュの育成や、UTの拠点となるセンターの設立に向けて歩みを進めています。
城崎温泉におけるユニバーサルな観光地づくりのテーマは、「外湯めぐりとそぞろ歩きのユニバーサル化」です。城崎ならではの観光を、すべての人に楽しんでもらおうと進めてきた取り組みと結び付けています。もともと城崎温泉には、駅が玄関、通りが廊下、旅館が客室、外湯が大浴場という「まち全体がひとつの旅館」という共通認識があるため、「自分の宿で対応が難しい場合は、ほかの宿を紹介する」という柔軟な考え方が浸透しています。そのため、バリアフリーの対応も役割分担し合う体制が整っています。
駅を出ればすぐに温泉街が広がり、坂が少なくほぼ平坦な地形であることも、ほかの観光地にはない強みとして、地域資源を生かしながら城崎らしいUTの取り組みが進んでいます。

(画像:<左>湯村温泉の荒湯近くに設置されたUTマップ<右>店舗入り口に貼られているスロープの表記)
但馬地域で選定されたもう1箇所が湯村温泉で、シンボルとなっているのが、98度の熱泉が湧き出る源泉「荒湯」です。ここでのユニバーサルな観光地づくりのテーマは、「すべての人にやさしいユニバーサルな足湯・湯がき湯つぼ等の整備」です。荒湯の高温の湯つぼで卵や野菜などをゆでる「湯がき体験」や、温泉街に点在する足湯など、湯村温泉ならではの魅力を楽しんでもらえるよう、UTの取り組みを進めています。
湯がき体験では、車いす利用者が使いやすい高さの湯つぼを新設し、足湯では車いすのままでも利用できる高さに一部を改修しました。足腰が弱った人でも、楽に座ったり立ち上がったりできます。また、足湯の壁面を斜めにして足を入れやすくし、車いすのフットサポートが支障にならないよう工夫も凝らされています。
このほか、スロープや手すりの設置、店舗入口用の仮設スロープの整備、筆談対応などを進め、散策も含めて誰もが湯村温泉を楽しめるよう取り組んでいます。
―やさしい観光づくり
UTは、「旅行をあきらめていた人」に、再び旅に出るきっかけと楽しさを届ける取り組みです。これは、単に段差を解消するといったバリアフリー対応にとどまるものではありません。UTの視点を生かしたまちづくりは、旅行者だけでなく、地域で暮らす人にとっても安心で快適な環境づくりにつながります。
年齢や障がいの有無にかかわらず、誰もが自然に旅を楽しめる社会を目指す「UT」。但馬の温泉地では、こうしたやさしい観光地づくりが着実に進められており、地域全体へと広がっています。
LINK UP ユニバーサルツーリズム
| ■城崎温泉観光協会 [所]兵庫県豊岡市城崎町湯島78 [問]0796-32-3663 ■湯村温泉観光協会 [所]兵庫県美方郡新温泉町湯98 [問]0796-92-2000 |












