但馬CULTURE VOL.92 事業の「二毛作」 巧みの技を未来へ《養父市》



(画像:ナカバヤシ株式会社 提供)

ナカバヤシ株式会社は、アルバムの製造販売や製本業で有名な会社です。兵庫県養父市大屋町に図書館製本の主力工場を持っていますが、同工場では、近年のデジタル化や紙媒体の縮小対策として、製本業とにんにく栽培の「二毛作」に挑んでいます。

―職人の技を継承するために

図書館製本業の工場が、にんにく栽培という”畑違い”の事業の両立をはじめたのには、いくつかの背景がありました。

図書館製本業とは、複数の雑誌や資料などをまとめて一冊の本に仕立て直す合同製本や、壊れた本の修理などを行う業務のことです。保存を目的とした製本方法で、同工場では年間30万冊もの製本を行います。作業の中には7〜8年かけてやっと習得できる技術もあるという、まさに職人技の業務です。

同製本業には創業以来、繁忙期と閑散期の差が激しいという課題があり、その悩みはデジタル化の拡大で、今まで以上に大きな問題として現れていました。

業務の縮小に合わせて「人を減らすことは簡単でも、熟練の技術者がいなければ繁忙期は対応ができなくなってしまいます。雇用を維持しながら問題解決ができる方法がないかと考えていた時、農機具メーカーのヤンマーとの出会いがあり、にんにく栽培に注目するようになりました。

―「ナカバヤシは本気だ」

大粒の実がぎゅっと集まって、食欲のわくいい香りがする「ナカバヤシのにんにく」。この純白のにんにくを栽培・加工しているのは、図書館製本業を行う技術者たちです。

事業の両立の決意を後押ししたのは、栽培時期でした。
製本の繁忙期は年度末の1〜3月と夏休みの7月〜9月です。
閑散期である4月〜6月、10月〜12月は、にんにくの収穫と植え付けの時期に適していたのです。

栽培をはじめた頃はあまりに畑違いなため、社員も驚きを隠せなかったそうですが、やってみたら意外に面白く、養父市の国家戦略特区の制度(※)を利用して本格的に農地を購入することにしました。

今ではにんにくの6次産業化にも取り組み、純白のにんにく、むきにんにく・にんにくペースト、黒にんにく、にんにくおかき・フライドガーリックなど、加工品の販売も行っています。

(※)養父市の国家戦略特区の制度とは・・・高齢化、人口・新規就農の減少などによる農地を、企業や人々が使用することで経済的に活性化し直す制度のこと。またその活動地域として指定されている場所を特区という。

―未来へ紡ぐ、巧みの技

兵庫工場での製本は、国会図書館をはじめ日本の大学図書館の8~9割を占めています。今日も先人たちが築きあげてきた資料を、後世に残していくため、修理したり、綺麗にまとめたりと、一冊一冊心を込めて向き合う職人たちがいます。

図書館製本業も農業もお客様の顔を見て行う仕事です。二刀流事業となっても、これまでの業務で培ってきた姿勢は変わりません。大切な本を預かり仕立て直し届ける時のように、にんにくに対してもその丁寧さを大切にされているそうです。

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■関連サイト
ナカバヤシ株式会社 兵庫工場
[所]兵庫県養父市大屋町笠谷111
[問]079-669-0227
[HP]https://www.nakabayashi.co.jp/

[ナカバヤシにんにく直送便HP]https://www.fueru-mall.jp/h-nakabayashi

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