但馬CULTURE VOL.94 藤和の大将軍スギ《朝来市》



朝来市和田山町にある藤和峠を抜けると、集落の入り口にどっしりとした巨木が佇み、大将軍スギと呼ばれ広く地域の人々に親しまれています。この大将軍スギと呼ばれる巨木は、昭和47年には兵庫県郷土記念物に指定され、さらには昭和53年に朝来市指定天然記念物に指定されました。

根周りは11.6m、樹高は35mにも及ぶ大将軍スギ。四方八方に枝分かれしている幹は、その数なんと12又。1本の木であることを疑いたくなるような勇壮な姿をしており、樹齢は推定650年以上にもなります。

集落を見守るこの12又の神木。人目を引く大樹には2つの話が残されており、1つは旅の高僧が使っていた杖を逆さまに刺したところ、大きなスギになったとの故事。この地が大将軍塚と呼ばれていることからこの名で親しまれていると言い伝えられています。

もう1つは、藤和という地名の由来となる話が伝えられています。

―藤和という地名の由来

文和2年(1353年)、丹波国の山垣城主であった足立遠政の息子・足立藤和は、戦を逃れてこの地に隠れ住んでいました。そんな折、平家の落武者であった藤原正司なる人物の墳墓を見つけます。

丹波足立家は藤原冬嗣を祖とする家系のため、祖先と同じ「藤原」の姓をもつ人間が同じようにこの場所に隠れていたことに強い因縁を感じ、正司の墓を「大将軍」と称し奉りました。

その側にスギの木を植え神木として崇め、成長したのが大将軍スギであるといい、このことを裏付けるように、藤和地区には今も藤原姓の人が多く暮らしています。

集落には正司が創建したという産土神社や、藤原家をまつった墓標が残されていると言います。古の神木は遥かなる時を越え、今も人々と共に暮らしています。

―現在の大将軍スギ

葛折りの山道を越えた先に現れる大将軍スギ。巨大な扉は人の背丈の倍ほどもあり、鍵がかかっています。
平成6年2月の大雪の時に雪の重みで枝が折れてしまい、主幹内部の空洞が表面化していて保護のために付けられています。

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■大将軍スギ
[所]兵庫県朝来市和田山町藤和381
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