但馬CULTURE VOL.91 和田の竜伝説《香美町》



(画像:香美町教育委員会提供)

自然豊かな香美町村岡区和田。春来峠の登り口に位置するこの地区には、竜にまつわる伝説が残っています。

―人を襲う竜

和田にはその昔、大きな池があったそうです。周辺は昼でも暗い森で、その池には竜が棲んでいると恐れられていました。その竜は誰彼かまわず人々を襲い、村の人々を悩ませていました。

ある時、旅の僧が村を通りかかりました。なんとかしてあげたいと、一計を案じた旅の僧。村人たちに大きなわら人形を作らせ、その腹の中にもぐさ(ヨモギを乾かして作ったもの)と針をつめて池のほとりに立たせました。僧がもぐさに火をつけると竜が現れ、人形を飲み込んでしまいました。熱さに驚いた竜は暴れ回りましたが、やがて池の底深く沈み、姿を消してしまいました。

その後、人々は穏やかな日々を楽しんでいましたが、村では次々に災難が起こるようになりました。村人は竜のたたりだと考え、池のほとりに小さなお宮を建て竜神として祀りました。すると村にはまた穏やかな日々が戻ったそうです。

―端午の節句の伝統行事として


(画像:香美町教育委員会提供)

和田では、この話に由来する菖蒲綱づくりが古くから伝わっています。端午の節句(旧暦の5月5日)に行われる伝統行事で、「ヨーイヤッサ、ヨイサッサ」のかけ声で竜に似せた綱を村人総出で編みます。菖蒲、よもぎなどを混ぜた藁縄で、できあがると2つの組に分かれて綱引きを行います。

火災などの厄除けを祈願する行事として行われ、昔は豊作を願い、その綱を刻んで田に入れていたそうです。現在は、毎年6月第1日曜に行われています。

―「絆」を繋ぐ

不思議なことに、菖蒲綱づくりを取り止めた年には村が大火事に見舞われたことがあったそうです。その後は毎年続けて行われ、今は村人の親睦の場として大きな意味を持っています。

声をかけあって作る一本の綱が、心を繋ぐ「絆」として息づいているのではないでしょうか。

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■関連サイト
和田の竜伝説
[所]兵庫県美方郡香美町村岡区和田 皇大神社
[HP]https://www.town.mikata-kami.lg.jp/www/contents/1267056328105/index.html

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