但馬CULTURE VOL.98 オオサンショウウオ《朝来市》



(画像:口を開けるオオサンショウウオ)

ガバッと開いた大きな口に、つぶらな目。短い手足にずんぐりとしたフォルムが愛らしいオオサンショウウオ。世界最大級の両生類で、その口の大きさから体が半分に裂けているように見えるため、かつては「ハンザキ」とも呼ばれていました。


(画像:「ハンザキ」はかつての標準和名で、朝来市生野町などでは「あんこう」と呼ばれることも)

―限られた生息域

形態が約3000万年前からほとんど変化していないことから「生きている化石」ともいわれ、生態は今でも明かされていないことが多いんだとか。その中でも野生のオオサンショウウオの寿命については、調査が非常に困難なこともあってかまだ特定されていません。オオサンショウウオの仲間は世界でもアメリカと中国と日本にしか生息しておらず、いずれも絶滅が危ぶまれており、日本では国の特別天然記念物に指定されています。

オオサンショウウオが生息しているのは兵庫県から広島県にかけての西日本で、特に中国山地に集中しています。但馬では川遊びや田んぼで見かけることも多く、お馴染みの生き物として親近感を持っている人も多いかもしれません。しかし、これほど多くのオオサンショウウオが身近に生息しているのは、全国的にみてもとても珍しいことです。

―朝来市のシンボルとして

その中でも朝来市は特にオオサンショウウオが多く、朝来市を流れる市川の源流域にあたる朝来市生野町黒川地区は、自然豊かでオオサンショウウオのメッカとも呼べる場所です。黒川地区とオオサンショウウオの歴史を語る上で欠かせないのは、故・栃本武良(たけよし)先生の存在です。栃本先生は黒川地区をフィールドに40数年間追跡調査を行った、オオサンショウウオ研究の第一人者です。市川のオオサンショウウオ生息個体数は日本国内でもトップクラスであったことから、姫路市立水族館で館長を務めながら黒川へと通い、退職後に移住。廃校になっていた黒川小中学校で「日本ハンザキ研究所」を立ち上げ、日夜研究に励んでいたそうです。その取り組みにより、野生下で同じ個体の追跡調査が40年以上も続けられています。寿命解明に世界で1番近い場所と言っても過言ではありません。


(画像:日本ハンザキ研究所)

そんなオオサンショウウオと縁の深い朝来市では、2020年頃からオオサンショウウオを朝来市のシンボルに掲げ“オオサンショウウオの棲むまち”としてのPRが本格的に始まりました。2022年6月には「日本オオサンショウウオの会・朝来大会」がスタートし、第17回大会では国際シンポジウムも同時開催。国内外の研究者らが交流する大イベントとなりました。2025年10月には同大会は20回を迎え、ますます盛り上がりを見せています。

―人気と課題

オオサンショウウオでまちを盛り上げようとする動きは他にもあります。独特のフォルムを活かしたグッズが次々と誕生しており、女性を中心にじわじわと人気を集めています。オオサンショウウオを知らなくてもグッズを買って帰る人も多いとか。黒川地区にある日帰り温泉施設「黒川温泉 美人の湯」では施設内に専用グッズコーナーを作り、動画でもアピール。認知度アップに一役買っています。


(画像:「黒川温泉 美人の湯」にあるグッズコーナー)

しかし、キャラクターとしての人気上昇とともに課題も増えています。その1つが「オオサンショウウオに触れてはいけない」ということがあまり周知されていない現状です。オオサンショウウオは国の特別天然記念物なので、文化庁からの許可がない人が触ると文化財保護法違反となります。また、目の前に動くものがあると反射的に噛みつく習性があるため怪我をする危険性もあります。朝来市内で見つけた場合は、まずは市に連絡をしましょう。

もう1つは、外来種との交雑により日本の在来種がいなくなってしまう可能性があることです。今日本全国で増えているのが、過去に中国から持ち込まれ野生化したチュウゴクオオサンショウウオとの交雑種です。幸いまだ但馬では見つかっていませんが、いつそうなってもおかしくありません。人間のちょっとした行動が、生態系を崩してしまう可能性があることを、今一度心に留めていたいですね。


(画像:大きく育ったオオサンショウウオ。田植えの時期となる春〜夏は特に見かけることが増えるそう)

―誇れる存在に

河川生物の生態系ピラミッドのトップに君臨するオオサンショウウオ。環境に敏感なオオサンショウウオは、川の健康状態をいち早く教えてくれる指標にもなっています。頂点を守るためには下層をしっかりと守っていく必要があり、朝来市の凄さは、豊かな下層を育めるポテンシャルにあるともいえます。オオサンショウウオが特別な存在としてではなく、当たり前に感じるほど身近な存在になっていることは奇跡なのかもしれません。地域の人々がその存在を誇りに感じることこそが、オオサンショウウオを守ることへの第一歩になっていくことでしょう。

LINK UP   オオサンショウウオ

■朝来市埋蔵文化財センター
オオサンショウウオを見つけた場合はこちらへ
[問]079-670-7330(月曜・祝日の翌日休館)

 
PICKUP