但馬PLACE VOL.27 隆国寺《豊岡市》


兵庫県豊岡市にある「隆国寺(りゅうこくじ)」は、室町時代に開基したお寺です。
県の重要文化財の襖絵や仏像などが収められているお寺で、牡丹の花が有名なことから「但馬ぼたん寺」という別名でも親しまれています。

―花の寺「隆国寺」

お寺の総門をくぐると、立派な三門(山門)が出迎えてくれます。

この三門は、文化2年に再建されたもので、三たん(但馬・丹後・丹波)随一と称されている歴史ある門です。楼上には来山者の邪気を払い、お寺全体を守護している釈尊・文殊・普賢の釈迦三尊と十六羅漢が祀られています。

お寺で古くから親しまれている牡丹は、その数約1000株。種類も約60種あるそうです。花は例年ゴールデンウィークが見頃となります。一輪一輪が豪華でひときわ美しく、見る人の心を豊かにしてくれる花です。

同寺では、牡丹の花のほかに、ドウダンやもみじ、沙羅や山あじさいなど四季を通じてさまざまな花を楽しめることから、但馬七花寺霊場(たじまななかじれいじょう)、関西花の寺二十五ヶ所霊場の一つになっています。

季節の移ろいを彩る花たちが、本尊のまわりを囲むように咲いているのも見所です。

―仏の世界に浸る

花だけでなく本堂のふすま絵や仏像、内庭園なども見ることができます。(本堂のふすま絵は、2024年4月中旬〜2027年3月まで修復中です)

本堂の36面のふすま絵は、県の重要文化財に指定されている日本画の一派・岸派の見事な作品です。「老松孔雀図(ろうしょうくじゃくず)」や「猛虎図」など、一見の価値があります。

ここでは、いくつかのふすま絵と興味深い宝物を紹介します。

本堂の東序室中にある「虎渓三笑図(こけいさんしょうず)」です。思想・教義を超えて仲良く語り合い、笑い合う姿が描かれており、真の平和のあり方について考えさせられます。

本堂内には市のシンボルとなっている「コウノトリ」に由来する宝物「幸のとり観音像」や、ふすま絵があります。

宝物「幸のとり観音像」は、手に「子宝」と「幸せの宝珠」を持ち、幸せを届けてくれる仏です。纏っている美しい色彩の羽衣には、いつどんな時でも飛んでいき、幸せを運べるようにと裾のほうが翼になっているそう。

観音像の近くには、羽ばたく鳥たちの様子が描かれたふすま絵「芦翔鶴図(ろしょうかくず)」もあります。

よく目を凝らしてみると、鶴と一緒に、コウノトリが2羽飛んでいるのが見受けられます。コウノトリは、鶴に似て羽先が黒いですが、脚が赤っぽく、目の周りが赤いという特徴があります。

別々の鳥が一緒にいる姿や、観音像の佇まいには、感慨深いものがありますね。

―日々の不浄を清める

同寺に訪れた際は、本堂の外の東司を訪れることも欠かせません。
東司(御手洗)の戸を開けると真正面に現れるのは、不浄を清める火の神「烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)」です。

「烏枢沙摩明王」は、古来より不浄を消し去る功徳があると信仰され、病気を治すのにご利益があると伝えられている仏です。

平成初期にヒットした有名な曲の影響で「トイレの神様」と呼ばれはじめたことで、その名が知られるようになった仏でもあります。

お守りやお札などの販売が行われている本堂横の受処では、入山の参拝記念として身も心も美しくなる「烏枢沙摩明王護符」(べっぴんカード)も受け取れます。大切に持ち帰り、心身を守護してもらいましょう。

花と仏の心にふれることのできる同寺では、入山料を支払った後の参拝の見学は自由です。
訪れた際は仏と向き合い、心静かに、マナーを守って鑑賞してみてくださいね。

LINK UP    隆国寺

■ 隆国寺
[所]兵庫県豊岡市日高町荒川22
[問] 0796-44-0005
[時] 9:00〜17:00 ※入山料 300円
[HP]
http://ryukoku-ji.com/
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