但馬PLACE VOL.24 紅茶専門店「tea room kotori」


史跡 生野銀山を有する兵庫県朝来市生野町。銀山を中心とした鉱山町一帯は重要文化的景観として選定されており、人々が鉱山と共に生きてきた形跡を見つけることができます。その銀山のほど近くにオープンしたのが、生野紅茶も楽しめる紅茶専門店「tea room kotori」です。

― ノスタルジックな風景を求めて

オープンしたのは2019年5月。オーナーの加藤菜穂子さんは、かつて地域おこし協力隊として神戸からこの地に赴任しました。

「緑の多い景色が好きで、列車に乗るのが趣味でした。特に播但線が好きで、たまたま下車した生野駅東口のノスタルジックな雰囲気に惹かれ、いつかは生野に住みたいとずっと考えていたんです」と加藤さん。そして協力隊1期生として採用され、晴れて生野に移住しました。

― 生野紅茶との出会い

協力隊としての任務は、主に地域づくりと特産品の開発です。活動の中でも、特に加藤さんを魅了したのが「生野紅茶」でした。生野銀山が稼働していたころ、地元農家によって生産された茶葉は「生野銀山茶」と呼ばれ鉱夫などに飲まれていましたが、その茶葉を紅茶に加工したものが生野紅茶です。

生野紅茶との出会いは、加藤さんが紅茶の世界に足を踏み入れるきっかけにもなりました。元々大のカフェ好きで、神戸にいた頃はほぼ毎日様々な喫茶店を巡っていた加藤さん。協力隊として生野紅茶生産者と共に畑整備を行うなど、紅茶の世界と触れ合うにつれ、その奥深さに魅了されていきました。「自分の店を持ちたい」という思いはだんだん強く育っていき、生野の奥銀谷(おくがなや)で実りました。

― “生野”を感じる看板メニュー

「生野紅茶はとてもあっさりしているので、ぜひストレートで味わってみてください。ほんのりと甘く優しい味がしますよ」と加藤さん。合わせてほしいのはリンゴの紅玉を使った「リンゴのタタン(季節限定)」など、クリームを使っていない素朴なケーキだそう。

看板商品となるのは、但馬では珍しいアフタヌーンティー。2段重ねになったスタンドに軽食や焼き菓子を載せ、紅茶と一緒に味わう喫茶スタイルです。
「食事からデザートまで、コースのように全体を通して楽しんでもらえるメニュー構成にしました」という言葉どおりサラダ、キッシュをはじめ、ケーキ2種などボリューム満点。焼き上げる際食感にこだわったスコーンには、「生野の名物を食べてもらいたい」という思いからハヤシライスのルーが添えられています。

― 誰でもくつろげるカフェ

「“紅茶専門店”というと敷居が高いイメージがありますが、そんなことはありません。私のお店ではどなたでもゆっくり過ごしていただけます」
そんな加藤さんの思いがつまったインテリアは、暖かみがあり落ち着いています。店内に入る際スリッパに履き替えるのも、小さな子どもがハイハイできるようにとの配慮から。くつろぐ人の健康を考え手塗りをした珪藻土の壁からも、その気遣いを感じられます。古民家を改装したため一部段差が残っていますが、スロープを持参すれば車椅子の使用も問題ありません。

メニュー表には馴染みある茶葉に加え、「キームン」など通好みの葉も並びます。「もっと種類を増やしたい」と語る加藤さんの声には、紅茶の楽しさが溢れていました。鉱山町に想いを馳せながら、生野の歴史を味わってみてはいかがでしょうか。

LINK UP 紅茶専門店「tea room kotori」

■tea room kotori
[所]兵庫県朝来市生野町奥銀谷1513
[問]090-6378-5282(加藤)
[時]11:00~17:00(16:30L.O)
[休]火、水曜日
(HP)https://tearoomkotori.wixsite.com/kotori
PICKUP