但馬PLACE VOL.26　「ほたるの里」　養父市奥米地

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春は桜、夏はホタル、秋は紅葉、冬は一面の雪景色など四季折々の豊かな自然を持つ兵庫県養父市奥米地（おくめいじ）。特に6月にはゲンジボタルが飛び交う名所として有名です。

そんな奥米地には宿泊施設をはじめ、カフェや自然学習施設などがあり、ホタルをシンボルとした地域づくりが行われています。

―　奥米地は昔と今が共存する場所

奥米地はかつて養蚕と稲作、但馬牛の飼育を主とした生業の生活で成り立っていました。道沿いを見渡してみると今も養蚕用の家（※）や牛小屋の名残り、参勤交代の道として利用されていた歴史、大正末期に建てられたレトロな建築物などを見ることができます。さらには相撲の原点とも言われる「ネッティ相撲」が行われている水谷神社など、歩いてみると時代の変化の過程を垣間見ることができる魅力的な場所です。

（※）養蚕用の家…養蚕するために造られた3階建の住宅のこと。壁に柱が塗り込められた”大壁”や、換気・採光の役割を持つ”抜気(ばっき)”と呼ばれる越屋根などの特徴がある。

―「ほたるの里」が伝える地域資源

「ほたるの里」と呼ばれる奥米地ですが、20年前に起きた台風23号の濁流によって、この辺りのホタルが流され一気に減少しました。

ホタルが棲む場所は、水が綺麗であることはもちろん、十分に飛び回れる広い場所、餌となるカワニナ（巻貝の一種）、木陰、岩場に茂る苔などあらゆる環境がとても大切です。もう一度その状態に戻すため雨風で荒れた川を整備したり、周辺の木々を定期的に伐採して植物にとっても居心地の良い場所を作るなど、村の人たちが力を合わせて手入れを重ね、またこの地で沢山のホタルが見れるようになりました。この大きな災害も一つのきっかけとなり、村では改めてホタルを大切な象徴として保護する考えが生まれました。

地区には宿泊施設「ほたるの館」をはじめとしたホタルや奥米地の自然と歴史を知るきっかけとなる数々の施設があります。「ほたるの里」はこの地に根付く文化や建造物、自然環境を守り残していくという地域活性化の役割も担っているのです。

年末年始・GW・お盆、特に6月ごろに開催されるホタル祭りの時期には、多くの人が幻想的なホタルを見に「ほたるの里」に訪れます。

―　憩の場「ほたるの館」と「ほたる こおひいい」

「ほたるの館（やかた）」は、元々、大正末期に建築された旧養父町役場庁舎を活用した施設で、白い壁と朱色の屋根が印象的なレトロな建築物です。宿泊・カフェ利用、他の施設の受付もこちらで行っています。

「ここでは色んな人との交流が生まれるので楽しいです。地域には、１人暮らしのお年寄りの方や介護を受けられている方もいるので、そういった方にも元気になってもらいたい」と話すのは「ほたるの館」の運営管理を行っている和田さん。（写真右）

同施設1Fに併設されているオーガニックカフェ「ほたる    こおひいい」では、”人にも環境にも優しい”をコンセプトに商品企画をしており、店内で蒸留した純水使用生コーヒーや、小麦から手作りの焼き菓子など数種類のオーガニック軽食が楽しめるようになっています。

ここでの過ごし方に決まりはなく、飲食物の持ち込みも可能です。宿泊しなくても誰でも利用可能のため、地域のコミュニティーのような場所にもなっています。以前からこのスペースはフリースペースとして存在していましたが、飲み物や焼き菓子が楽しめるようになり過ごし方の幅が広がってきています。

「カフェでの活動を通じてご近所同士の交流が広がって、それが地域の賑わいに繋がったり、環境のことを考えるきっかけになればと思います」と商品企画を担当している福田さんは言います。（写真左）

子供達に人気の”みかんサイダー”は、大人にもおすすめのドリンクです。有機みかん果汁をベースにアクセントでレモン汁、砂糖を少し加えられているそう。飲んでみるとシュワシュワと弾ける炭酸と優しい果実の香り・酸味が口に広がり気分も晴れやかになる一品です。

「美味しさだけでなく、洗剤も無添加のものを使用していたり、テイクアウト資材は100%土に還るもの、砂糖やミルクは乳化剤など添加物をなるべく含まない体に優しいものを選ぶようにしています」。

今後は焼き菓子やドリンクだけでなく食事も楽しめるよう企画中とのこと。

地域資源を継承し可能性を開拓している真っ最中の奥米地。川のせせらぎや鳥の声、幻想的なホタルの光の美しさはきっと心身に染み渡りますよ。

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