2021年4月、豊岡市に「芸術文化観光専門職大学」が開校しました。国公立としては日本初の芸術文化と観光の双方を専門的に学べる大学で、但馬では初の4年制大学です。
― “芸術文化観光”とは
「“芸術文化”と“観光”。この2つの視点は一見関わりがないように見えますが、結びつくことでより強い価値を生みます。“芸術文化”は長期滞在を促す地域の魅力になりますし、それを求めて訪れる人々をもてなすのが“観光”なんです」。そう教えてくれたのは、副学長の藤野一夫先生です。その強い思いは大学名にも現れています。
同大学は芸術文化と観光に特化した学びが特徴。演劇手法によって育まれた人材は、地域活性化のための大きな力になると期待されています。北海道から沖縄まで、全国から集まった新入生は84名。定員80名に対して8倍弱だったという入試志願倍率からも注目の高さが伺えます。卒業後は演劇や芸術分野での活躍はもちろん、マネージメント業務や旅行会社、メディア業界などさまざま。地域と観光の架け橋になるような人材を目指しています。
― 校内全体を劇場として
大学内には、演劇のためのありとあらゆる専門的な施設が整っています。「正面玄関入口や芝生部分も野外ステージとして使用できるよう設計しました。建物自体がスピーカーのように音を反響するので、他所の野外ステージと比べても遜色ない仕上がりになっています」と、舞台美術を教える杉山至先生。校舎は黒を基調としたモノトーンで、劇場空間の定番スタイルである「ブラックボックス」という劇場空間をイメージしています。
建物内には220人収容可能な「講堂兼劇場」をはじめ、「ダンス室」や「控え室」などプロの現場と同レベルの設備が揃っています。天井まで7メートルもの高さがある「大道具製作室」もそのひとつ。トラック搬入口から荷下ろしされた舞台セットを工房で組み立て、そのままノンステップで劇場へ運べるよう設計されており、大学自体がひとつの劇場として機能しています。
― クリエーションする劇場
「日本でいう“劇場”は、鑑賞の場として使われることが多いのではないでしょうか。しかし本場ヨーロッパなどでは、1ヶ月ほど時間をかけ劇場で作品を創り上げる、工房のような“クリエーション型”が主流です。これから世界を目指す学生たちには、グローバルスタンダードを学ぶ必要があります」と杉山先生。
今は感染症の流行により制限されていますが、将来的には一般向けに学内見学ツアーなども予定されています。貴重な専門書や洋書が並ぶ学術情報館や学生も集うカフェなど、私たち市民が訪れることができるスポットも数多く用意されていました。
― 育つヒナたち
藤野副学長は「学生たちはみんな意欲的で、積極的にこの土地から学びたがっています。但馬特有の文化はとても大切なものですが、もう一つ大切なのは“日本はどんどん変わっていく”ということ。学生の視点で魅力を再発見することは地域課題を強みに変え、地域再生の活力になります」と語りかけます。
9月には「豊岡演劇祭2021」の開催が予定されています。演劇祭での実習はカリキュラムの目玉でもあり、学生たちの活躍を目にする機会も増えることでしょう。世界に羽ばたこうとするヒナたちは、豊岡の郷で飛び方を学んでいます。
LINK UP 芸術文化観光専門職大学
■芸術文化観光専門職大学 [所]兵庫県豊岡市山王町7-52 [問]0796-34-8123 (HP)https://www.at-hyogo.jp/ |