兵庫県新温泉町「兵庫県立但馬牧場公園」内にある但馬牛(たじまうし)博物館。日本農業遺産に認められた「兵庫県美方地域の但馬牛システム」についても詳しく紹介されており、子どもから老人まで楽しく学ぶことができるスポットです。
― 黒毛和牛の名素牛
1994年10月に但馬牧場公園の開園とともに開館した同博物館。但馬牛の歴史やそれを支える文化、地域との共生など、但馬の人々と牛の生活を楽しく学ぶことができます。2018年4月、より幅広い世代が楽しめるようリニューアルオープンしました。
但馬牛は、世界で唯一他地域の牛との交配を避けて純血を守ってきた名和牛です。神戸牛や松阪牛、近江牛といった有名なブランド牛の素牛(もとうし)として、また、全国各地の和牛改良の素牛として大活躍しています。
― 地域が育てる但馬牛
「生きているときは但馬牛(たじまうし)、肉になると但馬牛(たじまぎゅう)と呼ぶんですよ」と、副館長の野田昌伸さん。入り口で出迎えてくれるスタンプの印影は“鼻紋”と呼ばれる牛の鼻模様です。人間の指紋のように個体ごとに違った模様を持っており、「この鼻紋は牛舎にいる“ゆず”という但馬牛のものです。ぜひ会いに行ってみてください」と教えてくれました。
ルートに沿って進むと豊富な展示が出迎えてくれます。特に牛の戸籍ともいえる牛籍簿(牛籍台帳)や、明治時代から続く牛の家系図展示は圧巻です。「牛籍簿は日本初の血統登録の基となったもので、この牧場公園がある新温泉町で最初に記されました」と野田さん。但馬の地では、古くから牛を家族のように扱っていたことを示しています。
― 多彩で楽しい展示物
他にもミニチュア展示やアニメーション映像など、世界に誇る但馬牛を楽しく学べる仕組みが来館者を飽きさせません。その中でも最も目を引くのは、中央にある巨大な牛に映し出されるプロジェクションマッピングです。
牛のモデルになったのは、全国の黒毛和牛の99.9%にその血統に繋がるという伝説の種雄牛「田尻号」です。大きな田尻号の体をキャラクタが駆け回り血統を守る重要さ、関わる人々の物語をコミカルに教えてくれます。「牛に対して、こんなに愛情と手間をかけている地域は但馬以外にはありません」と、セリ市で多くの牛を見てきた野田さんは言います。
― 但馬の宝 但馬牛
「美方郡に伝わる、“牛は人がつくるもの”ということわざをご存知ですか?人の手入れが大切だということを言い表した、但馬牛のふるさとならではのことわざです。若い方々が但馬を出た際、“自分の地元にはこんなに凄い宝があるんだ”と胸を張れるよう、但馬牛と地域の関わりに興味をもってほしいですね」。
「兵庫美方地域の但馬牛システム」は次の目標として、世界農業遺産への認定を目指しています。但馬の宝、ひいては日本の宝である但馬牛。ぜひ博物館に一度訪れてみてはいかがでしょうか。
LINK UP 但馬牛博物館
■但馬牛博物館(兵庫県立但馬牧場公園内) [所]兵庫県美方郡新温泉町丹土1033 [問]0796−92−2641 (HP)http://www.tajimabokujyo.jp/?page_id=3 |