佐津川右岸に位置し、日本海に面する香美町香住区訓谷。
白砂青松の静かな海岸が広がり夏場に多くの海水浴客が訪れるまちです。
―まち並みを変えたレジャーブーム
昭和30年代後半のレジャーブームから増え出したという旅館・民宿が立ち並ぶこのまちは 昔は山から流れ下りてくる佐津川の恩恵を生かし、農業を生計の糧にしていました。
そして、農業の他に家計の大きな支えになっていたのが、「地引網漁」です。
―地引網漁とは
陸岸を拠点に海の沖合まで網をぐるっと張り廻し、網の両端につけた引き網を引き上げて漁獲します。
そのため昔は浜の東側の高台に「魚見台」と呼ばれる山番小屋が用意され、そこで湾内に入ってくる魚群を監視してました。
魚種によって漁獲を行う組合が分けられ、
大網(ハマチ網)だと明治組。小網(イワシ網)だと西組・東組などがあり、小屋の番人から声がかかった組合は、どんな用事があろうと浜に駆けつけなければならなかったそうです。
その後、漁法の改良などにより昭和35年頃から魚が湾内に入ってこなくなったそうです。
現在の県道11号沿いには復元された魚見台があり、日本海を見渡すことのできる絶景スポットとして生まれ変わっています。
―集落にある巨樹・巨木の存在
歴史ある樹木の存在もこの土地の特徴と言えます。
集落で一際大きくそびえ立つ大クロマツは『ひょうごの巨樹・巨木100選』に選定されており、樹齢約400年、幹周りは496センチほど。50年ほど前には数百年生の他の松も生い茂っていたそうです。
沖野神社境内に立つ大ケヤキも『但馬の巨木100選』に選ばれています。
こちらは樹高21メートル(2階以上のアパート並み)、幹周り5・3メートルを誇る巨木です。
鎌倉後期に隠岐(島根)に流された後醍醐天皇が3体の尊像を海に流したといわれる逸話をご存じでしょうか。
沖野神社にはその中の1体が現在の佐津地区公民館の建つ場所に打ち上げられ、以来、祭神として祀られたという伝承が残っています。
また境内には、明治29年に建てられた芝居堂もあり農閑期になると村芝居が演じられていたそうです。
地域ではその文化を受け継ぎ、秋祭りの宵祭には若手会による芝居が続けられています。
大ケヤキもその情景を長い間、そばで眺めてきたのでしょうね。
―のどかな景観づくりを行う人々の人情味あふれる姿
まちの伝統を守る人々は、花による景観づくりの取り組みもしています。
毎年4月に開催されるオープンガーデンは、今年で15回目を迎えました。
コロナの影響もまだ残っている昨今、以前のように積極的に民宿やカフェ、ランチなどの提供は出来ないながらも、香住らしいほたるいか入りの色鮮やかなお弁当と花たちでおもてなしの工夫をしているそうです。
地引網で培われた連帯感はこうしてまちの風土として残り、海辺で続くまちづくりに生かされているのかもしれません。
日本海の絶景を楽しんだらその周辺の散策も兼ねて、まずはこちらに訪れてみてはいかがでしょうか。
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