但馬CULTURE VOL.76 但馬開拓を祈願された地がため地蔵


兵庫県朝来市と丹波市付近にある遠阪峠。かつては但馬国と丹波国の国境であり、円山川水系と加古川水系との中央分水嶺でもあります。その峠の朝来市山東町側の登り口付近には、「地がため地蔵」と呼ばれるお地蔵さんが小さな祠に祀られています。

―神々の開拓

かつて、但馬の地は泥海でした。人々の生活は苦しく、大変難儀だったと言います。

そこで、天日槍命(アメノヒボコノミコト)をはじめとする但馬五社(絹巻神社・出石神社・小田井神社・養父神社・粟鹿神社)の神々が集まりました。力を合わせて但馬の平野を開拓しようと、瀬戸の津居山を切り開きその泥水を日本海に流し出したのです。

―六十六ヶ所の地がため地蔵

しかし、但馬の土地はなかなか泥が乾きません。もっと住みよい土地にしようと思われた神々は、見国岳と言われる粟鹿山の頂上に集まりました。そして乾ききらない但馬の土地を眺め、大きな梵字を書き、その要所の六十六ヶ所に地がため地蔵としてお地蔵さんを祀ったのです。

そのおかげで但馬の土地は乾き、今のように大きな盆地を中心とした豊かな但馬国が生まれたと伝えられています。

―但馬の遍路道

但馬地蔵巡礼六十六ヶ所とは、全国六十六ヶ国の但馬版として整備された巡礼道です。総道程は約175キロメートルあり、心を込めて巡れば全国をまわるだけの功徳が得られるとされています。

但馬全域にわたって地蔵菩薩を示す「訶」の梵字をかたどった順路になっており、その一番手前にあるのが「地がため地蔵」です。このお地蔵さんは、但馬地蔵巡礼六十六ヶ所の40番目の札所になっています。

―但馬の地を見守る

仏を讃えるご詠歌には「柴原をわけゆく我ものちの世は頼む地蔵の姿おがむよ」とうたわれています。

今も大切にされている小さな祠は、朝来市山東町側から遠阪峠を登り国道427号線から柴地区に入って奥に進むと山際に佇んでいます。「地がため地蔵」に感謝し、霊場めぐりに出かけてみてはいかがでしょうか。

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■地がため地蔵
[所]兵庫県朝来市山東町柴
(HP)https://tanshin-kikin.jp/tajima/279
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