2014年、国家戦略特区に指定された兵庫県養父市。様々な挑戦を続ける農業特区をご紹介します。
―硬い「岩盤規制」
役所や業界団体などが改革に強く反対し、緩和や撤廃が容易にできない規制を岩盤規制と呼びます。農業、医療、雇用などの分野で、地域を特定して、それを突破しようというのが「国家戦略特区」。特定の地域に限って法律などの規制を大きく緩めることで、企業や人々がより一層活動しやすくなる取り組みのことです。
日本では昔から、株式会社が農地を所有し事業参入することが認められないなど、様々な規制がありあした。しかし「中山間農業」のモデル地域として特区に指定された2014年当時、養父市は日本で唯一、株式会社による農地所有が認められていたのです。
―特区だからこそのスピード感
「国家戦略特区のメリットはそのスピード感です。従来では、自治体や団体が提案した計画を国に認可してもらうためには、膨大な時間が必要でした。しかし特区なら各地域ごとで国に直接提案でき、議論してもらえる。国単位ではなく地域限定で規制緩和を試すことができます」とは同市国家戦略特区・地方創生課の圓山裕基さん。特区を利用し、同市の農業に参入して営農を続けている企業は13社にもおよびます。その結果、市内の休耕田が約26ヘクタールも復活し、多くの雇用も生まれました。
事業の閑散期に農業を行なう“仕事の二毛作”を展開する企業や、水耕栽培などの土を使わない農業を展開する企業など形は様々。「地元住民と良い関係を築いている企業が多いと感じています」と、圓山さんはいいます。
「休耕田の復活を目の当たりにした地元の人々からは『企業に任せたままでいいのか。私たちも地域ぐるみで頑張らないと』と奮起した前向きな声を聞いています」。
―様々な緩和
また、国家戦略特区では指定された分野(同市なら中山間地域における農業)だけでなく観光、医療などいろいろな分野の規制緩和を試すことができます。同市では、マイカーで住民や観光客を有料運送する「やぶくる」や、テレビ電話を使った服薬指導、旅館業法の緩和で古民家を旅館として再生させる試みなどにも取り組んでいます。
特例を活用している人々の声には、「この活動を持続させていきたい」という共通点がありました。普段の生活では変化に気付かない人も多いかもしれませんが、地域の持続可能性の芽が未来へ向けて確実に伸び始めています。
―プレイヤーが支える特区
「国家戦略特区だからと言っても、手をあげてくれるプレイヤーがいないと行政だけでは何もできません。試行錯誤しながら自由に遊ぶ子どもの砂場遊びのようなイメージで、事業者が何でも試し、チャレンジができる実証の場だと思っていただければ」と圓山さんは話します。プレイヤーの存在は心強く、実際に多様な分野の現場からの提案で、多くの実証が進められているといいます。
手間をかければかけるほど、野菜の収穫成果が大きく変わる土づくりのように、日本の未来を背負った土台づくりが着々と進められています。
LINK UP 現代の「楽市楽座」 農業特区とは
■養父市役所 [所]兵庫県養父市八鹿町八鹿 1675 [問]079-662-3161 (HP)国家戦略特区ページ |