但馬CULTURE VOL.48 農業遺産 但馬牛


“世界の舌を魅了する”神戸ビーフや特産松阪牛の素牛「但馬牛(たじまうし)」を育む「兵庫美方地域の但馬牛システム」が、2019年2月に日本農業遺産に認定されました。

―日本初の、牛の血統登録

兵庫県北西部に位置する美方郡は但馬牛の原産地として知られ、全国の黒毛和牛の99.9%に血縁を持つとされる名牛「田尻号」のふるさとです。江戸時代から但馬牛の改良に熱心だった美方地域では、同じ谷筋の牛で交配を重ね、優れた特徴を受け継ぐ「蔓牛(つるうし)」と呼ばれる家系群を形成しました。

1897年頃には、日本初の血統登録の基本となる「牛籍簿(牛籍台帳)」を整備し、一頭一頭を管理する持続可能なシステムを作り出します。黒毛和牛の中では全国で唯一郡内の血統にこだわった育種改良を続けてきました。また水田では、但馬牛の堆肥を利用し、稲わらを飼料として牛に与える「環境創造型農業システム」が発展したことにより、地域の暮らしや農村環境、イヌワシに代表される希少で多種多様な生物資源が守られています。

―農業遺産への道

2018年2月、香美町、新温泉町、たじま農業協同組合、兵庫県、地元商工観光団体など23団体が集結し、『「美方郡産但馬牛」世界・日本農業遺産推進協議会』を発足しました。“兵庫美方地域の但馬牛システム”の歴史的価値を顕彰し後世に伝えるため、国や世界が定める『農業遺産』の認定を目指すためです。

農業遺産とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたって継承されてきた独自性のある農林水産業と、それと密接に関わって育まれた文化やランドスケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった伝統的な農林水産業システムを認定する制度です。

―世界の農業遺産を目指して

念願叶い、2019年2月に「兵庫美方地域の但馬牛システム」は、農林水産省から日本農業遺産に認定されました。日本農業遺産の認定は兵庫県初で、畜産分野では日本初の認定となります。農林水産省が定める「地理的表示(GI)保護制度」にも登録されている但馬牛。GIと合わせて、名実ともに誇れるものにしたい。そして国連食糧農業機関(FAO)が認定する世界農業遺産への登録も目指していると、協議会メンバーは話します。

今日、私たちがおいしい和牛肉を味わうことができるのは、但馬牛によって育まれた里山の暮らし、生物、伝統、文化、そして先人たちによって脈々と受け継がれてきた育種改良の歴史があるからこそ。昔から家族同様に愛情を注いで育てられ、美方郡の風土が育んできた“農宝”は今後も大切に受け継がれていきます。

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■「美方郡産但馬牛」
世界・日本農業遺産推進協議会  代表事務局
[所]兵庫県美方郡香美町香住区香住870-1
(香美町農林水産課内)

[問]0796-36-0846

 

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