但馬CULTURE VOL.42 余部クリスタルタワー


地域のシンボルともいえる、兵庫県香美町にある余部橋梁。2010年夏にコンクリート製の新橋に生まれ変わりました。その海側に無料のエレベーター「余部クリスタルタワー」が設置されたのは2017年11月のことです。展望施設「空の駅」へのアクセスも容易になり、新たな観光スポットとして人気を集めています。

― 東洋一の鉄橋

2010年に運用を終了した余部鉄橋は、1912年から2年2ヶ月をかけ、延べ25万人の手によって建設されました。特徴は、鉄鋼を櫓状に組んだトレッスル式の橋脚。高さ40mを超える、建設当時としては東洋一の規模を誇る鉄橋が造られることになりました。

橋脚1基に対する足場の数は、約2300本。足場の組み立てだけでも、約13日を費やしました。鋼鉄の接合に用いられたリベット(鋲)の数も4万9千本にのぼり、工事責任者であった岡村信三郎技師が、毎日高い足場に登り、1本1本確認したことは有名な話です。

―安全なコンクリート橋へ

現在JR餘部駅側の3本の橋脚は現地保存され、鉄橋は安全なコンクリート橋に建て替えられました。新しい橋を通り過ぎる列車の音は、以前に比べて格段に静か。「以前は列車が通る音で時間を計りましたが、今では通りすぎたことに気がつかないこともあるんですよ」と、地元の人が教えてくれました。

余部のまちは、この橋梁とともにいつも暮らしてきたといっても過言ではありません。かつては陸の孤島と呼ばれていた場所。北は日本海、三方を山で囲まれ、町へ出るためには、車も通れない峠道しかなかったといいます。

―新たな観光地として

駅にある展望台は、橋梁と日本海、そして集落全体が見渡せる「空の駅」として、人気の絶景ポイントとなっています。そんな「空の駅」に続く、無料のエレベーターが2017年11月に設置されました。愛称は「余部クリスタルタワー」。午前6時から午後9時30分まで利用でき、高齢者や車椅子利用者なども気軽に「空の駅」を楽しめるようになりました。

またガラス張りなので、上昇・下降の最中も海や集落の景色が見られ飽きさせません。待合室では滞在時間を有意義に過ごせるよう、デジタルサイネージを使い周辺観光スポットである余部や鎧地区、香住海岸等の観光スポットを空撮等の映像で紹介しています。

―橋梁と共にさらなる100年へ

夜はクリスタルタワー自体が美しくライトアップされます。季節によって色が変わるのも楽しみの一つ。運が良ければレインボーカラーのライトアップを見ることができるかもしれません。

さらなる100年へと、橋梁と共に歩んでいく余部の町。ローカル線に揺られて、餘部駅でひと休み。先人たちの歴史に思いをはせながら、のんびりと足の向くまま旅してみてはいかがでしょう。

LINK UP 余部クリスタルタワー

■余部クリスタルタワー
[所]兵庫県美方郡香美町香住区余部1687

[問]0796-36-3355(香美町役場観光商工課)

 

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