安心できる暮らしのバロメーターともいえる医療の充実。怪我や病気、出産、救急、高齢化など、ライフスタイルによっても医療のニーズはさまざまです。最近では過疎化や医師不足などの問題もよく耳にするようになりました。いざというとき、但馬の地域医療はどのような体制になっているのでしょうか。
― 但馬の地域医療
但馬には8つの公立病院があり、それらが中心となって住民の医療を支えています。医師不足が急激に進む中、24時間365日の救急と地域医療を守ろうと、平成19年に大規模な医療再編が行われました。豊岡市にある豊岡病院、養父市にある八鹿病院は急性期医療を担い、他の6病院は慢性期医療を担う病院として、役割を分担させたのです。
急性期医療とは、病気やケガが発生して間もない、緊急または重症な患者に手術などの集中的な治療を行う医療のこと。慢性期医療とは、急性期は脱したもののまだ入院が必要な患者に対する医療のことです。同じような機能をもった病院がバラバラで診療するのではなく、連携することでそれぞれが役割分担をし、地域全体でひとつの病院として機能させることで、安定し医療を提供することが狙いです。
―救命救急の中心的存在、豊岡病院
豊岡病院は明治4年に創立しました。日本で2番目にできた公立病院で、但馬の中核病院としての役割を持っています。北近畿エリア唯一の救命救急センターがあり、生命に危険が及ぶような重症・危篤患者への対応を行う「三次救急」を担っています。平成22年からドクターヘリとドクターカーの運行がはじまり、ドクターヘリに関しては毎年日本一の運行回数を記録しています。
ドクターヘリは豊岡から15分での移動が可能なため、但馬だけでなく丹後・丹波エリアまでカバーできます。さらに専門家の医師を招き、専門医のバックアップも受けられるようになりました。これによって但馬の三次救急はかなり充実したと言えるでしょう。他にも“但馬のお産を守ろう”と、平成27年に「但馬こうのとり周産期医療センター」を開設しました。ハイリスクの妊婦、胎児、未熟児の対応ができるようになり、新たな機器も整備し、今まではヘリコプターで神戸まで搬送していた未熟児も、NICU(新生児に特化した専用のICUのこと)で対応可能になりました。
―特色ある地域医療
八鹿病院は入院や手術を必要とする患者を対象とした「二次救急」を担っているだけでなく、リハリビテーションを中心とした回復期医療、老健施設や訪問看護など、医療だけでなく看護も含めた対応を行なっています。特にリハビリテーションに力を入れており、他の一般病院に比べて多くの技師を有していることが特徴です。また高齢者だけでなく、お産や子どもの健康管理の充実も進めており、但馬初の産後ケア事業も始まっています。産後の悩みケアや心と体のサポートなど、若い人にも心強い存在となっています。
健康づくりの新たな拠点施設として開院した朝来医療センターでは、入院の必要がなく帰宅可能な患者を対象にした「一次救急」と「二次救急」を担っています。医療だけでなく、介護、保健、福祉、子育てなどサービス拠点としても機能しています。豊岡病院などの規模の大きな病院とは役割が異なりますが、地域住民に寄り添った医療をめざしています。
―私たちにできること
大切なのは、自分の体は自分で守るということです。健康に関心のある人は増えていますが、タバコや食べ過ぎなど生活習慣を気にする人の数はあまり増えていません。
病院との付き合いは病気やケガをしてから…という考え方を180度変えた付き合い方が、これからの時代には重要になってきます。但馬の病院の現状と役割を知ることは、適切な医療を受けられる第一歩となります。この一歩がこれからの超高齢化社会を乗り切る鍵になるのではないでしょうか。
LINK UP 地域全体でひとつの病院に!但馬の医療
■豊岡病院 [所]兵庫県豊岡市戸牧1094 [問]0796-22-6111 (HP)https://www.toyookahp-kumiai.or.jp/toyooka/ ■八鹿病院 [所]兵庫県養父市八鹿町八鹿1878番地1 [問]079-662-5555 (HP)http://www.hosp.yoka.hyogo.jp/ ■朝来医療センター [所]兵庫県朝来市和田山町法興寺392番地 [問]079-672-3999 (HP)http://www.toyookahp-kumiai.or.jp/asago/ |