但馬CULTURE VOL.26 大ヒノキの根元に眠る万年酒


兵庫県新温泉町浜坂にある、雪深い集落久斗山。その地のシンボルともいえる、大杉神社にある大ヒノキに眠る「万年酒」を使った「酒つぼ占い」とは、どのようなものなのでしょうか。全国的にもめずらしい、どぶろくを使った神事に迫ります。

― 雪深い谷間の国

兵庫県新温泉町浜坂の市街地から約15キロ、国道178号から久斗川渓谷沿いに20分ほど車を走らせると、標高130メートルの山あいの村、久斗山地区が見えてきます。ここは24年前まで小学校があり、集落の中心地でした。この場所から谷筋に中小屋、池ヶ平、本谷の3つの集落があり、子供たちは数キロかけて通ってきていたそうです。

冬場は2メートルを超える大雪が積もったこともある豪雪地帯。各集落には冬季用の分校が設置されていました。集落には造りのしっかりした剛健な民家が多く、まさに「谷間の国」といわれる、但馬らしい山の風景が広がっています。

― 自然とともにある生活

集落の歴史は古く、池ヶ平地区からは約8千年前の縄文時代の遺跡が見つかっており、平家の落人伝承も伝えられています。さらに、久斗山の一番奥の集落、本谷地区からは江戸時代の「たたら場跡」が発見されました。

この辺りでは古くから急流を利用して砂鉄を採取し、製鉄が行われていました。たたら製鉄ではふいごを使い、火力を強めて鉄を得ますが、そのためには大量の木炭が必要となります。豊かな森林と深い谷から流れる大量の水が流れ出るこの地は、製鉄を行うのに格好の場所だったといえるでしょう。また、製鉄の副産物である炭焼きは、長きに渡ってこの地区の生計を支えた主要産業でした。

― どぶろくを使った「酒つぼ占い」

古来より自然の恩恵を受けてきた久斗山集落。地元の人たちは自然を崇敬する気持ちも人一倍強く、毎年10月1日に氏神である大杉神社で行われている「酒つぼ占い」の神事はその代表ともいえます。神社本殿の裏にそびえる大ヒノキは、兵庫県の天然記念物にも指定された久斗山集落のシンボルで、幹周りは約6.5m、推定樹齢は約800年という巨木。その根元にある空洞におさめた「万年酒」を使い、10月1日に宮司によって「酒つぼ占い」が行われます。

「万年酒」は、地元でとれた米と、久斗山に流れ込む七つの谷の水で作られた濁酒(どぶろく)です。古丹波の壺に入った濁酒が澄んでいれば「吉」、濁っていれば「凶」。「吉」の場合はそのまま来年の占いに使われますが、「凶」の場合は後日作り替えられます。過去には4年間「吉」が続いたこともあったそうです。このような神事は全国的にも珍しく、まさに自然とともに生きてきた久斗山らしい行事として、綿々と受け継がれています。

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■大杉神社の大ヒノキ
[所]兵庫県美方郡新温泉町久斗山1279−2
[問]浜坂観光協会 0796-82-4580
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