町の角やあぜ道にひっそりと立ち、雨の日も風の日も変わりなく風景にとけこみ私たちを見守っているお地蔵さん。その中にお化粧をしているものがあることをご存知ですか。人々の思いを受け止め、美しく微笑んでいる化粧地蔵は何を語りかけているのでしょうか。
― 但馬と地蔵の縁
お地蔵さんとは地蔵菩薩のことを言い、『釈迦の入滅後、弥勒菩薩の出生するまでの間、無仏の世界に住して六道の衆生を教科・救済するという菩薩』(広辞苑より)で、もともとインドでおこった信仰だとか。
中国をへて、わが国には平安期の中期(10世紀頃)に伝えられたといいます。私たちの知っているお地蔵さんは、子供達や交通安全の守り神で、庶民に身近な存在ですね。また、但馬では全国でもまれな『六十六地蔵巡り』が言い伝えられており、但馬地域と地蔵の不思議な関係が伺えます。
― 個性豊かな化粧
地蔵に何かを塗りつけると力が増すと伝えられ、例えば奈良県川西村の油かけ地蔵や大阪府南河内郡の泥かけ地蔵などがあり、化粧地蔵もその一つではないかと考えられています。中にはおしろいを塗り、紅を引き、青いアイシャドーをほどこされたものもあります。しかし、いつの頃から起こったのかは、よくわかりません。
関東から東北にかけては7月23日・24日、関西では1ヶ月遅れの8月23日・24日に地蔵盆が盛大に行われます。そのときに子供達が中心となって、地蔵を祭り、化粧をきれいにする風習があります。化粧地蔵が残っている分布を全国的にみると、日本海側の港町や川筋に当たる町や村に多く見られますが、東京をはじめ太平洋岸の町や村には見られないようです。但馬内では特に豊岡市出石町に多く見られます。あなたの周りにも、美しく装ったお地蔵様があるかもしれません。ぜひ見つけてみてください。