但馬CULTURE VOL.22  但馬の養蚕


絹の原料となる繭を作る蚕は、日本全国で大切に育てられてきました。その中でも但馬地域は古くから養蚕業で栄え、江戸期には「東の群馬、西の但馬」とも呼ばれていました。

― 養蚕を広めた上垣守国

 但馬の養蚕業の基礎を築き普及させた先駆者として、上垣守国という人物がいます。守国は兵庫県養父市の生まれで、18歳から養蚕の先進地であった陸奥国伊達郡福島に行き、蚕種を持ち帰って蚕種改良に尽力しました。そして48歳の時に『養蚕秘録』という養蚕の技術書を出版したのです。『養蚕秘録』は上中下の3巻からなる養蚕技術書で、養蚕の歴史や桑の栽培、蚕の飼育方法などが絵図を使って分かりやすく描かれています。当時、農民は文字が読めない人も多かったため、挿図を多数入れ、図を見るだけで養蚕が学べるように工夫されていました。

これに着目したドイツの医師・博物学者のシーボルトが本書を持ち帰ると、ヨーロッパでも注目され、フランスのパリやイタリアのトリノ等で翻訳出版されました。日本国内でも、明治20年代まで80年以上にわたって出版され続けられました。国内はもとより、日本の技術輸出の第1号として世界からも高い評価を受けています。

― 人と蚕の生活

 守国が生まれた養父市大屋町蔵垣地区に、昭和初期の養蚕住宅を復元した「上垣守国養蚕記念館」があります。『養蚕秘録』をはじめ、生糸や繭、養蚕に関する書物や蚕具、農林用具などの貴重な資料を見ることができます。建物は蚕を育てるのに大切な温度管理がしやすく、人と蚕が一緒に暮らしやすいよう様々な工夫がされています。部屋の畳を上げると養蚕室に早変わりするなど、蚕中心の生活スタイルを見ることができます。蚕は「お蚕さん」「お蚕様」と呼ばれるほど大切にされていました。

「上垣守国養蚕記念館」の目の前には「かいこの里 交流施設」があります。「養蚕と桑」をテーマにした都市と農村の交流施設として、平成17年にオープンしました。名物である桑の葉を麺に練りこんだ「桑うどん」のほかにも、桑の葉茶や桑の実(マルベリー)ジャムなどの販売もあります。桑は蚕が葉を好んで食べることでよく知られていますが、葉にはルチンなどのフラボノイドやマグネシウム、カリウム鉄分など各種ミネラルや葉緑素が豊富に含まれています。

― 蚕に会いに行こう

 また、この「かいこの里 交流施設」では、温度・湿度を管理しながら、約2,000匹の蚕を実際に飼育しています。毎年初夏に行われるかいこウィークの期間は、成長過程を見ることのできる貴重な時期です。かいこウィーク期間中は飼育現場の見学のほか、真綿作りや糸ひきなどの体験もできますので、ぜひ一度お越しください。

LINK UP 上垣守国養蚕記念館

■上垣守国養蚕記念館
[所]兵庫県養父市大屋町蔵垣246-2  [問]079-669-1580
[時]10時~16時
[休]毎週月曜・火曜日、年末年始(12月28日~1月3日)

LINK UP かいこの里 交流施設

■かいこの里 交流施設
[所]兵庫県養父市大屋町蔵垣246-2  [問]079-669-1580
[時]10時~16時 [休]土日のみ営業
(HP)http://www.fureai-net.tv/kuwanohacha/
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