但馬CULTURE VOL.6 ブランドを支える松葉ガニの職人

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競り子の威勢のよい声が響き渡る！11月6日は待ちに待った松葉ガニ漁の解禁日。今年も日本海に冬を告げる松葉ガニの季節がやってきました。この日から但馬の港は一気に活気づき、日本海沿岸は紅色一色に染まります。今回は但馬の三大ブランドガニをリポート。ブランドとして最高の品質を誇る秘密に迫ります。

―　100以上の選別基準は世界一「柴山ガニ」

　山陰屈指の水揚げ量を誇る香美町の柴山港。ここのすごさは何と言ってもカニの選別基準。世界一の厳しさと言われるランク分けは、なんと110ランクにも分かれています。この細かな選別によりカニの品質を保証し、仲買人は適正価格で仕入れることができます。

　大きさや重さ、形、色艶などを判断してランク分けされ、その中でも最高級とされるのが、番ガニの1番。通称「幻の1番ガニ」と呼ばれ、1度の漁で出るか、出ないかという貴重なものです。さらに2011年からはさらのその上、1.4キロ以上の良質なカニだけに許される「柴山ゴールド」がブランド化されました。数千匹に2、3匹いるかどうかの希少なものなので、まさに出会えたらラッキーです。

　これらの選別を行うのは漁師を支える女性たち。カニは鮮度が命。セリの時間が迫る中で、パッと見ただけで身のつまり具合や傷などをチェックして、ランク分けしていきます。カニを持った瞬間に判断していく姿は神技。10年以上のキャリアがないとできない職人技で、素人にはどこに違いがあるのか分かりません。「番ガニ」を選別するにはさらに30年以上の経験が必要といいます。選別を間違えると仲買人からの信頼を失う重要な仕事。繊細な女性の目利きが柴山ガニの品質を支えています。

　また、柴山港の漁船ではカニを元気な状態で維持するため、水温を2、3度に維持できるイケスを完備。活きたままセリにかける「水槽売り」にもいち早く取り組み、徹底的に「活」にこだわっています。

―　日本トップクラスの漁獲量「浜坂カニ」

　日本有数の漁獲量を誇る新温泉町の浜坂漁港。「カニ元・浜坂」を宣言し、2、3日程度の効率的な操業をできる船が多いため、港にはほぼ切れ間なくカニが水揚げされます。そのため、地元のみならず、各地から良質のカニを求めて、仲買人が集まってきます。

　今では当たり前となったカニのブランド化。浜坂漁港では産地表示が叫ばれる10年以上も前から、港名と船名が入ったタグを付けるように義務化しました。タグを1枚ずつ取り付けるという作業は、セリ場に並ぶカニの数を見ると、本当に頭が下がる思い。タグを付けるということは漁師にもプレッシャーがかかり、最初は反発もあったといいます。

　「手間のかかる作業ですが、人の力なくして、最高のカニは提供できません」とは、組合長の川越さん。数年前では現役の船主だったこともあり、いつでも最高のカニを提供したいという想いは誰よりも強いといいます。

　活ガニの販売もそうした気持ちを表す取り組み。浜坂では平成16年より、全船がカニの生息する水温に適した大型水槽を完備し、活きたまま陸揚げし、セリも空気を入れた水槽で活きたまま行われます。さらに目方売りは浜坂漁港独自のもの。何千枚と揚がるカニすべてを量りにかけて、重さが分かるように札が付けられています。仲買人が少しでも買いやすいようにと考案された売り方です。徹底した「品質管理」と「漁師の努力」によって、最高のカニが提供されています。

―　品質と鮮度のよさが自慢「津居山カニ」

　 山陰の名湯・城崎温泉からすぐ、豊岡市の津居山港は日本随一とされる品質が自慢です。漁場は丹後半島・経ヶ岬沖周辺で、すらりとのびた長い足と美しい良型のカニが獲れることで有名な場所。カニの餌や土壌など、良質のカニが育つ条件にぴたりとはまる好漁場です。幻のカニと呼ばれる「間人ガニ」と同じなので、品質のよさは折り紙付きです。

　また、漁場まで約50キロ、約2時間半と近く、大型船・小型船ともに日帰り漁が可能なので、鮮度のよさは抜群です。鮮度のよさと味のよさは直結するともいわれ、繊細さが特徴の松葉ガニ。さらに城崎温泉の各宿までは車で10分もかからないので、新鮮なカニをすぐに提供できることが津居山カニの魅力です。

　津居山カニの証しは、沖から上がったばかりの漁師が1つ1つ脚に付けた青色のタグ。そこには、港の名前と船の名前が記されています。これは自分たちのカニに対する嘘偽りのない漁師たちの自信と誇りの表れ。毎年、初セリには1杯5～6万円ほどの高値で取り引きされ、人気ブランドガニとして関西一円に出荷されています。

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