2012年3月に惜しまれつつ85年の歴史に幕を閉じた映画館「CINEMACTION豊劇 -豊岡劇場-」。一度閉館してしまった映画館ですが、2014年に映画上映と地域のコミュニティの拠点として生まれ変わりました。その仕掛人となったのは、不動産業の傍らCINEMACTION豊劇 -豊岡劇場-の代表を務める石橋秀彦さん。豊劇とこの地域に対する想いを伺いました。
― 「映画だけじゃない映画館」として、まちの交流と発信の場に。
「85年も続いたというのは全国的にも稀で貴重な文化財です。建物だけではなく、市民の生活のなかにおける文化の行き渡りをここまで担って来たということが大切で、それに対しての敬意の想いが強かった」とは、豊岡劇場・代表の石橋さん。
豊岡市元町にある但馬唯一の映画館・豊岡劇場。「豊劇(とよげき)」の愛称で長年親しまれてきた劇場ですが、2012年冬に豊劇が閉館するというニュースを聞き、当時劇場のオーナーであった山崎さんに「どうか閉館しないでくれ」と駆け寄ったという石橋さん。元々、彼も豊劇で映画に触れ、それがきっかけで映画監督を目指して北アイルランドに留学した経験の持ち主。この時はいち市民のいち映画ファンとして、迷わず声をあげたと言います。
しかし時、既に遅し。映画館業界のデジタル化に加え年々と減って行く入場者数もあり、そのまま閉館してしまいます。豊劇に通い、写真と映像でアーカイブを残しながら閉館までの時間をともに過ごしていくなかで、劇場が閉館し1ヶ月が過ぎた頃、オーナーの山崎さんに豊劇再開の話しを持ち込みました。そして初の企画として、ボランティアによる劇場の大掃除とビアガーデンを行おうとした矢先、不運の事故でオーナーの山崎さんが亡くなってしまいます。
さすがに諦めざるを得ない状況だった石橋さんですが、同年11月に1日限りの上映会を行なった際、来場者アンケートから改めて豊劇に対する惜しむ声や思い出・愛情を感じ、多くの人々から共感と協力を得られると確信。それがきっかけで映画館自体を購入し、有志を集めて「豊劇新生プロジェクト」を発足し再開事業へと乗り出しました。クラウドファンディングでリノベーション費用を募い、今までと同じように映画だけをやってもまた同じ結果になってしまうので「映画だけじゃない映画館」をコンセプトに、幅広いまちのコミュニティスペースへと生まれ変わりました。
― 新生「CINEMACTION豊劇 -豊岡劇場-」とは?
・遠くに行かなくても、子ども達が映画を楽しめます。
・映画のついでにセミナーやワークショップを楽しめます。
・あなたの作った作品をもっと発信できる舞台ができます。
・他地域に住まわれているクリエイターの方は豊岡に活動の場を持つことができます。
・海外に在住していたオーナーが、クリエイターの海外交流をアドバイスします。
・ものづくりから得意料理の作り方まで、あなたも先生になる場所ができます。
・デートに行ける場所が、ひとつ誕生します。
(参照:CINEMACTION豊劇 -豊岡劇場-HP)
「まずはバーを作って人を集まる場を作りました。2階の小ホールは椅子も撤去してライブやワークショップなど誰もが様々な目的で自由に利用できます。人々が集まって地域が盛り上がるきっかけになれば」と石橋さん。小ホールでは同窓会をしたりクラブイベントで200人くらいの若者が集まったり、すでに豊岡の新スポットとして多くの人たちに利用されているらしいです。
今後は駐車場のあった場所にテナント入れて店舗展開する予定で、ますます人々で賑わう場所に。
「そういえば高校生のカップルが映画を観に来ていた場面は感動したなぁ」とぽろっとこぼす石橋さん。
そういう場面が今後もっと増えて、豊劇がこれからも地元に愛され続ける場所であってほしいと願っています。
「映画ってちがう文化の世界を2時間の疑似体験で経験できることが魅力のひとつです。言葉、音楽、映像で向こうからやって来てくれる。尚かつそれを映画館で観ることによって共有もできるんですよね。共に感じたり考えたり、ということは社会におけるコミュニティにも重要な役割を担っているんではないでしょうか」。
話を伺っていて、根源にあるのはやはり映画とこのまちに対しての熱い想いでした。
LINK UP 石橋 秀彦
■CINEMACTION豊劇 -豊岡劇場- [所]兵庫県豊岡市元町10-18 [時]10〜23時30分(映画のスケジュールはホームページで) [休]月曜日 [問]0796-34-6256 (HP)http://toyogeki.jp/ (FB)https://www.facebook.com/toyogeki |