「ネイリスト」とは、爪の美容と健康を保つプロのこと。女性を中心に広く人気がある職業で、専門サロンで施術を受けたことがある方もおられるのではないでしょうか。では「福祉ネイリスト」という職業はご存知でしょうか。今回ご紹介するのは、北近畿を中心に活躍する福祉ネイリスト 吉岡恵(ケイ)さんです。
―福祉ネイリストとの出会い
元々ネイルが好きだった吉岡さん。「資格は持っていましたが、友人や知人に個人的に施術するだけで満足していました。しかし偶然見かけた新聞記事で福祉ネイルを行う“福祉ネイリスト”に出会い、私がしたかったのはコレだ!と強く感じたんです」と教えてくれました。
福祉ネイリストとは、主に高齢者・病気や障害を抱えている方に対して施術を行うプロのこと。一般的にイメージされる美容ネイルとの大きな違いは、その専門性と心への寄り添い方にあるといいます。
―様々な事情に合わせた施術
「高齢だったり障害があったり。理由は様々ですが、何らかの事情でネイルサロンに行けない方々は多くいらっしゃいます。そういった方々の施設などを訪問し、笑顔を届けるのが福祉ネイリストなんです」と吉岡さん。施設だけではなく、
利用者の多くは高齢者です。爪が割れていたり歪んでいたり、また波打つように歪んでいるのは高齢者特有の症状だそうです。机の上まで手を上げられない利用者も少なくありません。そういった場合は吉岡さん自身が椅子を離れ中腰になるなど、相手の状態を見極めながら手早く進めていきます。
―楽しい時間を
爪は、人体の中でも特に目に入りやすいパーツです。化粧やヘアメイクとは違い、鏡を持ち上げるのが辛い方や移動が難しい状況でも、自分の好きなタイミングでその鮮やかな色合いや可愛いモチーフなどを楽しめます。
「福祉ネイルの特徴として“飾りのストーンを使わない”や“施術の際刃物を使わない”などありますが、私たちが大切にしているのは声かけなんです。利用者の多くは、自分はこれから何をされるんだろう…という不安を常に持っておられます。なので利用者に触れる前に“これから消毒をしますね”など説明し、“ネイルは楽しいことなんだ、この人は楽しいことをしに来てくれる人なんだ”と安心してもらえるように心がけています」。他にも認知症高齢者の方には回想法という療法を使用し、認知症の進行を遅らせるアプローチもしています。
―広がる福祉ネイル
地道な活動が浸透し、徐々に利用者が増えつつある福祉ネイル。ですが、1人では活動範囲や受け持てる数に限度があります。「イベントや施設などでも行列ができてしまいますし時間がかかってしまいます。もっと仲間が増えたらたくさんの人に福祉ネイルを届けられるのに…と思い続けていました」
そんな思いが高じ、吉岡さんは2019年10月に日本保険福祉ネイリスト協会が定める兵庫豊岡校を開校しました。講義は全7回で、北近畿を中心に生徒に合わせ出張もしくはzoomで講義を行います。実際に講習を受けた介護士の女性は「現場では業務が多く、利用者さんと触れ合う機会が少なく残念に思っていました。手を触りながら行う福祉ネイルは、レクリエーションとしてもぴったりです」と笑顔を見せました。現在日本保健福祉ネイリスト協会認定校は全国に約50校、福祉ネイリストは
―福祉ネイルのこれから
目標は、将来的に各地域や各施設に1人福祉ネイリストがいる状態だと吉岡さんは語ります。今は通常のネイルサロンや介護士との兼業が多い職業ですが、このまま地位を確立し1つの職業として成り立ってほしいと願っています。「ゆくゆくは生徒から講師を出したいですね。もっと多くの方に笑顔を届けたいです」と微笑みます。豊岡校では現在生徒を募集しています。
その人のコンディションに寄り添ってくれる福祉ネイル。年齢や性別も問いません。指先から広がる新しい世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。
LINK UP 吉岡 恵さん
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