但馬STYLE VOL.32 諏訪 正和さん《朝来市》


東京都出身の諏訪正和さんは、2018年8月に地域おこし協力隊として兵庫県朝来市に赴任しました。活動内容は、朝来市が提言する「家」でも「学校」でもない第3の居場所、「サードプレイス」のコーディネーター。諏訪さんにとってのサードプレイスはどのような場所なのでしょうか。

―サードプレイスに集う人々

演奏会や英会話教室など、地域の集いの場所として多くの住民が足を運ぶ生野マインホール。そのロビーの一角にあるのが、朝来市の開設するサードプレイスです。
「ここでは何をしても良いし、何もしなくても良いんですよ」と諏訪さん。机とホワイトボードが用意されたロビーの一角には、試験勉強をする高校生や段ボール工作に取り組む未就学児など、いろいろな世代の子どもたちが自由に過ごしていました。

諏訪さんは美術大学で油絵を学んだ後、青年海外協力隊としてエジプトで2年間環境教育に取り組んだ経験を持ちます。同市の地域おこし協力隊の募集内容を見て「自分に向いている」と感じ、2018年8月、「中高生のための学びのサードプレイスのコーディネーターとして着任しました。

―第3の居場所「サードプレイス」

「朝来市が行っている“学びのサードプレイス”とは、主に中高生に向けた人財育成プロジェクトの一環です。中高生が地域で活躍する大人とつながることで主体性を育み、まちへの愛着・誇り・まちを構成する一員である自負心を意味する“シビックプライド”を育てることにつなげようと考えました」と、朝来市役所総合政策課の馬袋真紀さん。

部活や勉強が本格化する中高生は、生活が限られた場所の往復になりがちです。学校と家以外の交流の場として考られたのがサードプレイスです。コーディネーターがいるサードプレイスは、山東生涯学習センターと生野マインホールの2ヶ所。生野町のコーディネーターとして選ばれたのが、朝来市と同じく子どもの多様性と居場所について考えていた諏訪さんでした。

―あなたはあなたのままで素晴らしい

諏訪さんが作りたいサードプレイスは「どんな表現でも許される場」です。
「おかしな言い方かもしれませんが、悪口も言えない場所にはしたくないんです。いわゆる“良い子”ではない子でも、そのままの自分を受け入れてくれる場所が子どもたちにとって必要なのではないでしょうか」と諏訪さん。その思いには、諏訪さんがどうしても伝えたい「あなたはあなたのままで素晴らしい」というメッセージが込められていました。

「行動範囲が限られた生活では、どうしても日常で接する登場人物の数が少なくなってしまいます。今ある限られた価値観の中で息苦しい思いをする子どもたちもいたのではないでしょうか。“世の中にはいろんな表現がありどんな自分でも素晴らしい”と自分自身で感じるには、地域の方々の多様な価値観に触れる機会が必要です。その点、外部から来た私は多様性の塊のようなもの。大人にも子どもにも本音で接します」と諏訪さんは笑います。

―つぎの“居場所”として

諏訪さんは今後生野町への定住を見据え、新たな居場所として生野高校近くに拠点を作ろうと考えています。もともと住む場所にはこだわりがなかったという諏訪さん。心を動かしたのは自分を必要としてくれる子どもたちの姿でした。
「今年のコロナ禍では生野マインホールを一時閉鎖するなど、室内での活動が難しいタイミングがありました。自分に何ができるだろうと考えていた時、子どもたちが窓の外から“ちょっと外に出て来て”と声をかけてくれたんです。彼らと良い関係が築けているんだと、とても嬉しくなりました」。

「中高生との関係を築くには時間が必要」と諏訪さんはいいます。「生野の子どもたちに会って、定住への考えが180度変わりました。関わってくれた子たちの10年後が見たいんです」。2021年7月末の協力隊任期終了まで、生野マインホールでは毎週水曜日に諏訪さんが駐在しています。目的がある人も無い人も、どんな人でも気軽に訪れてみてはいかがでしょうか。愛称である「しゅわわ」と呼びかけると、素敵な笑顔で受け入れてくれますよ。

LINK UP 諏訪 正和さん

■生野マインホール
[所]朝来市生野町口銀谷594-6
[問]079-679-4500

(HP)https://www.city.asago.hyogo.jp/cp/0000008037.html
(HP)https://www.city.asago.hyogo.jp/cp/(あさご暮らし)
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