但馬PLACE VOL.20 江原河畔(えばらかはん)劇場


2020年春、兵庫県豊岡市に「江原河畔(えばらかはん)劇場」がオープンしました。「演劇のまち」を目指す豊岡の挑戦に、世界中の演劇人が熱い視線を注いでいます。

― 河沿いの劇場

ゆるやかな円山川沿いに建つ江原河畔劇場。JR江原駅から徒歩2分のこの場所に、平田オリザさんが主催する劇団「青年団」の本拠地として江原河畔劇場がオープンしました。建物の元となったのは旧豊岡市商工会館です。

旧豊岡市商工会館は1935年に日高町役場として建設されました。その後日高町商工会館などとして使われ続け、地域と共に歴史を歩んでいます。


『銀河鉄道の夜』2020年

― 江原と共に

「築85年になりますが、天井の立派な梁や金庫室の扉など素晴らしい素材はそのまま使いました」と、地域おこし協力隊の河村竜也さん。劇団「青年団」の一員で、2020年9月に開催を予定している豊岡演劇祭の中心メンバーでもあります。

1階は約140人を収容できる劇場があり、2階はスタジオや劇団員のけいこ場、楽屋などがあります。建物の最上部にある櫓は、写真を元に復原されました。

― プレオープンを迎えて

劇場を作るにあたり、地域の方々と何度も話し合いを持ち、繰り返し周辺を散策したという河村さん。設計図と実際の梁の太さが違ったため、急遽クラウドファンディングで資金を調達するなどアクシデントもありました。それでも「江原の人たちが愛着を持っている建物なので、できる限り建物を引き継ぎたかったんです」と話します。

プレオープンは3月28日。新型ウイルスの影が全国に広がりを見せつつありました。
「この場所は地域の方々に支えられて作られた劇場です。この場所から感染者を出すわけにはいかず、集客すべきなのかギリギリまで迷いました」と河村さん。しかし地域住民の「無事にオープンさせるため手伝いがしたい」という後押しに支えられ、感染症に万全の備えをし行ったプレオープンでは、大勢の観客が演劇を楽しみました。

― 日常に差し色を

日常で演劇を鑑賞できる環境は、但馬の人々に大きな影響を与えると河村さんは話します。
「何かしらの芸術に触れた経験は日常を豊かにします。生活が大きく変わるわけではありませんが、言うなれば“非日常”という差し色ですね。一口に演劇といってもその演目は幅広く、ダンスのようなものから日常会話まであります。カフェに行くような感覚で、どうぞ気軽に普段着で来てください」

9月に行われる「豊岡演劇祭2020」ではメイン会場となる同劇場。豊岡市は世界最大の演劇祭を目指しており、江原河畔劇場はその中心拠点としても多くの期待を寄せられています。地域の要として人々の生活を守り続けた建築物は、これからの但馬と共に大きく羽ばたいていきます。

LINK UP 江原河畔劇場

■江原河畔劇場(略称:ERST“アースト”)
[所]兵庫県豊岡市日高町日置65-10
[問]0796-42-1155(12:00 – 16:00)
(HP)https://ebara-riverside.com/
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