兵庫県新温泉町浜坂にある老舗菓子店「浜坂 新杵」の３代目である岡崎洋介さん。とち餅が有名な同店でお土産に最適な菓子を作るため、洋菓子の技術で挑みます。
― 「栃の実」の魅力
「栃の実」は独特なほろ苦さと香りを持った、栗に似た木の実です。古来より万病の薬に使われ不老長寿の木の実ともいわれているとか。山陰地方など一部の地域で古くから食べられており、新温泉町もその数少ない地域の1つです。
栃の実はとてもアクが強いので、そのままでは食べられません。乾燥させて皮をむき、川水につけたものをさらに木灰のこねたものの中に寝かすなど、食べられるように加工するまで1ヶ月ほどかかります。また豊かな自然からとれる良質な木灰も必要で、アク抜きができる環境や技術者は年々減っています。
― 代表銘菓 栃もち
「浜坂 新杵」は浜坂駅から歩いて5分の場所にある、地域になくてはならない菓子店。特に昔ながらの製法で作られるとち餅は、そのなめらかな舌触りに町内外を問わず多くのお客様に愛されています。
しかしとち餅にはすぐに生地が硬くなってしまうという難点がありました。そのため長時間の持ち運びには向かず、他の消費期限の長い土産物に押されています。その現状を変えたいと思ったのが、同店3代目である岡崎洋介さんでした。
― 老舗菓子店の3代目として
「地元が誇る栃の実を使ったお菓子をもっといろんな人に味わってもらいたい。そのためには日持ちがするお菓子の開発が必要でした」と岡崎さん。そこで考えついたのが、自身が学んだ洋菓子の技術を使った焼き菓子です。
ラインナップは日持ちする「パウンドケーキ」「ブッセ」などをチョイス。とち餅を食べない若い世代でも親しみやすい味に仕上がったと、岡崎さんは笑顔を見せます。浜坂 新杵本店の他、道の駅山陰海岸ジオパーク浜坂の郷などでも扱われており、観光客でも手軽に栃を味わうことができます。
― 伝統の継承
「栃の加工技術の継承、そして栃の味を広く伝えることは、次の世代の地域の誇りにも繋がると考えています」と岡崎さんは語ります。新温泉町を訪れた際は、地域に愛される栃の新たな味わいを楽しんでみてください。
LINK UP 岡崎 洋介さん
| ■浜坂 新杵 ［所］兵庫県美方郡新温泉町浜坂老松1070-4 ［問］0796-82-3088 |
