今回ご紹介するのは、関東から但馬に移住した山﨑友香さんです。元雑誌編集者である山﨑さんが遠く離れた養父市大屋町に移住したのは、ある農家がきっかけでした。ライターと農業を両立させるライフスタイルについて伺います。
― 「食」をみつめて
豊かな自然に囲まれた但馬の山間地、養父市。ここに初めて山﨑友香さんが訪れたのは2014年のことでした。
「元々食べ物の流れを知りたいという思いが強かったんです。農業や漁業など、一次産業に興味がありました」と山﨑さん。マスメディアを学んだ大学の卒業論文では屠殺に目を向け、卒業後は東京の出版社で農業専門雑誌を担当しました。その仕事の一環で訪れたのが、養父市大屋町にある「わはは牧場」です。
わはは牧場は、家畜のエサ作りに始まり飼育・精肉加工販売まで一手に行う小規模牧場です。牧場主の上垣康成さんの「安全でおいしいお肉を食べたい」という思いから、循環する農業を目指し今のスタイルになりました。
「姿のまま販売される野菜や魚とは違い、牛や豚は飼育から屠殺など食肉までの作業が分断され、食の流れが見えづらくなっています。なのですべて自分で行なっている畜産農家がいれば面白いと思い取材しました」と山﨑さんは振り返ります。
― やりたいことを諦めないライフスタイル
出版社で編集者として忙しく働くうち多くの農畜産家と出会いましたが、わはは牧場はその中でも特別だったといいます。特に強く惹かれたのが、康成さんの妻である美由紀さんの姿でした。美由紀さんはわはは牧場で農畜産業に従事するかたわら、柔らかな絵柄を活かしイラストレーターとしても活躍しています。
「農業とイラストレーター。どちらか手放すのではなく両立させる働き方は、まさに私が憧れたライフスタイルでした」
やりたい仕事を諦めない、そんな未来を選択したときに見えたのが、わはは牧場の姿だといいます。上垣さん一家と交流を重ね、2016年11月に移住してきました。現在自分の但馬牛を持つなど、畜産農家としてもステップアップを続けています。
― 日常を豊かに
一方ライターとして、同じく大屋に移住してきたデザイナーやフォトグラファーと共に養父市を紹介する情報誌「長靴ノート」を制作している山﨑さん。地方に住む人々が持つ“技”の数々に驚かされたといいます。
「但馬は自然もいいですが、何より人が凄いです。わはは牧場の上垣さん夫婦をはじめ、近所の普通のおばあちゃんでも“物がないなら自分で作ろう”という発想があり、作り上げることができる技術を持っています。面白い人がいることが一番の移住のきっかけだったので、皆さんが当たり前だと思っていたことが私にとって魅力でした」
山﨑さんは、こんな事を言うと怒られてしまうかも…と前置きしながら「農業をしているという感覚はあまりありません」と語ってくれました。仕事と暮らしが地続きで、“農業をしている”というより、“生活の幅を広げている”という感覚だといいます。わはは牧場に併設されているshop&cafe「があぶう」で会えるので、ぜひ訪れてみてください。彼女が「胃袋を掴まれた」と惚れ込む、おいしいお肉が食べられますよ。
LINK UP 山﨑 友香さん
■わはは牧場 [所]兵庫県養父市大屋町蔵垣393 [問]079-669-1434 (HP)http://www.wa88.jp/ |