但馬STYLE VOL.14 三木 宏祐さん《豊岡市》


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運命に導かれるようにして茅葺き職人の道へと足を踏み入れることになった豊岡市在住の茅葺き職人、三木宏祐さん。伝統の技術を継承しながら、環境が叫ばれる日本において、新しい茅葺きの可能性を模索する三木さんのお話です。

― 命の住まうものとの出会い

 但馬の地で茅葺き職人として活躍している三木さんは、兵庫県相生市出身。子供の頃は野球少年で、体育教師を目指して大学に進み、自分が茅葺き職人になるとは全く思っていなかったそうです。

 大学で地球環境について考える機会があり、その頃から「自分で生きている」という自分中心の考え方から、「人は自然に生かされている」と考えるようになった三木さん。人間にとって一番大切な「衣食住」のあり方を見つめ直すようになります。海・山・川が荒廃している現代において、自分が無関係のままでよいのかと自問自答します。「自然と関わる仕事がしたい」。水と森の関係を学ぼうと吉野で林業の研修を受けたり、障害者福祉施設で働いたりする中で、三木さんは自分の哲学と感性を磨いていきましたが、「これだ」と思えるものには出会うことはできませんでした。

 そんな三木さんの運命を変えたのが25歳の時、生まれ育った相生市の隣町にある縄文遺跡に訪れた時のことでした。復元された茅葺きの遺跡の中に入って静かに目を閉じると、電気のようなものが体中に走ったと言います。

 「茅葺き住居の中に入った時、ここは命の住まうものやでと言われた気がしたんです。これこそが、自分の考える衣食住の答えだと思いました。次の週には茅葺きの里として有名な京都の美山町に車を走らせていましたね。」

― 茅葺き職人へと運命的に導かれる

 とにもかくにも茅葺きを作れるようになりたいと、美山町へ車を走らせた三木さん。そこは縁もゆかりもない土地。職人と出会える保証もありませんでした。しかし、ここでも運命的な出会いが待っていました。

 「車を降りると神社があり、良きご縁があるようにとまずお参りしました。気の向くままに歩いていると、また別の神社が。さらに歩くと、また違う神社に出会いました。そして、境内から出ると、男性と出会い、茅葺き職人に会いたいと聞いたんです。そしたら、目の前の家やと教えてくれた。その家は茅葺き職人の親方の家だったんです。」

 導かれるように茅葺き職人の道へと進んだ三木さん。自分の環境に対する思いや弟子入りの話をすると、親方からは「いつでも来たらええ」と返事をもらいました。その帰り道、思わず車の中で叫んだという三木さん。自分の目指すべき道が見えた忘れらない1日でした。

― 茅に新しい可能性を感じる

 2009年4月、美山茅葺株式会社に入社した三木さん。5年の年季明けで一人前とされる茅葺き職人の世界で、ベテラン職人の技を見ながら、技術と経験を蓄積していきます。茅葺き住居を復元する仕事が主で、現場は全国に及びました。その土地土地で工法も違い、毎回、仕事は手探りだと言います。

 着実に仕事を覚え、親方から仕事を任せてもらえるようになった三木さん。伊勢神宮の式年遷宮に立ち会う機会を得たり、茅葺きを現代の住居でも活用しているオランダへ研修に行くなどする内に、「茅葺き」の可能性について考えるようになります。

 「茅の主な原料となるヨシは、4月に青葉が生えるとわずか2~3ヶ月の間に2m近くにまで成長します。その間、水質を浄化する働きをもたらし、秋に花が咲き、その後、次の世代へと栄養分を土にはき出して木化します。そこで人間が刈り取ることによって、初めて茅となります。茅は材として使われ、さらに役割を終えると田んぼの肥料となり、また土へと帰ります。また、ヨシ原は人間が手入れしないと、荒地になります。そこには循環サイクルがあり、まさに人間と自然が共生する形があります。」

― 自分にしかできない「茅葺き」

 環境が叫ばれる今だからこそ、「茅葺き」には新しい可能性があると感じた三木さん。伝統のある茅葺き住居を守ることも大切ですが、現代の暮らしの中にもっと茅葺きを取り入れられのではないかと、昨年、独立を決意しました。かつて人類が持っていた自然の呼吸やリズムに合わせて生きていく感覚を、現代の人にも感じてもらいたいと話します。

 「オランダは茅葺きが盛んでデザインも最先端、茅壁といって至る所に茅を活用しています。しかし、循環させるという考え方はあまりなく、これは日本の素晴らしい伝統だと思います。自分は両方のよい所を生かして、文化財として見る茅葺きではなく、生活の中に当たり前としてある茅葺きを提案していきたいと考えています。茅葺き住居が比較的少ない但馬では、こうした新しい考え方も受け入れてもらいやすいと感じています。」

 茅葺きを現代に生かす方法を模索している三木さん。現段階においては、法律の規制により新築の屋根を茅葺き屋根にするには一定の条件を満たさないと厳しいが、茅壁、玄関や縁側のひさしなど身近な場所に取り入れることは可能で、高額で古風な大屋根のイメージが強かった「茅葺き」に変革を与えるべく日々奮闘中。また、茅の魅力を幅広い方々に感じてもらうため、子どもたちとのワークショップや葦で舟を作る祭りを企画するなど、普及活動にも力を入れています。懐かしくも新しい次世代的な茅葺きを暮らしの中に取り入れたいという方、ぜひ三木さんに気軽に相談してみてはいかがですか。

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LINK UP 三木 宏祐

■但馬茅葺き
[所]兵庫県豊岡市日高町水上 [問]090-5153-4010
(FB)https://www.facebook.com/但馬茅葺き-779713408743697/

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