「鞄のまち豊岡」を象徴する鞄の拠点施設「Toyooka KABAN Artisan Avenue(トヨオカカバンアルチザンアベニュー)」が平成26年4月にオープン!持ち前のコミュニケーション能力を活かし、マネージャーとして奮闘している林健太さんのお話しです。
― 鞄でまちづくり!!会社を辞め、豊岡に移住を決意
林さんは大阪府出身。大学で建築設計を学び、建売住宅やデザイナーズマンションなどを企画する仕事に関わった後、大阪のまちづくりコンサルタント会社に入社しました。現場の課題をいろいろな人と一緒になって考え解決していく仕事は、とても充実していたと言います。
そんな林さんと鞄とのつながりは、コンサルタントの仕事で豊岡を訪れたことがきっかけでした。「豊岡にとって、鞄は特別大切なもの。柳行李づくりから発展・進化してきた鞄産業には、今も多くの方が仕事として関わっています。日本中で作り手が減っている中、豊岡には鞄関係の企業が集中していて、ベテランの職人さんがたくさんおられます。知る人ぞ知る「鞄の産地・豊岡」に惹かれて、全国からものづくり好きの若者もやってきます。コンサルタントの立場で関わっていくうちに、「産地」としての豊岡の魅力と可能性に引きつけられていきました。」
豊岡が鞄の産地としてあり続けるためには、豊岡で職人を育て、豊岡で鞄の魅力を伝えられるような施設が必要だ。現在アルチザンを運営する豊岡まちづくり株式会社や豊岡市、豊岡商工会議所が中心となり、約4年前アルチザンのプロジェクトが動き始めました。
マネージャーとして抜擢された林さんは、会社を辞め、2012年8月に豊岡に移住。空き家を自分で改修しながら暮らし始めます。複数の鞄の企業が一緒になってひとつの事業に取り組むことは、全国でも例がありません。林さんは関係者と対話を重ね、素材にこだわり、新しい豊岡の鞄のブランドを創るために、文字通り奔走しました。
― かばんを核としたまちづくり
「豊岡の強みは『歴史』と『職人』」。林さんはそう強く語ります。このイメージを伝えるため、アルチザンの建物にも反映させました。「素敵なかばんのデザインにも負けないショップを」と「アルチザン(職人)」をコンセプトに、イタリア人デザイナーが設計。柳行李の編み込みのディテールや素材感、職人の醸し出す手仕事感や革の質感を演出し、照明や壁、床、トイレに至る細部にまでこだわって造られています。
一方、豊岡のかばんを取り巻く環境は加速度的に変化していると言います。地域ブランド「豊岡鞄」では、OEM生産(他社ブランドの製品を委託製造する生産方式)の脱却を図るべく、展示会への出展や百貨店などのイベントにも参加し、豊岡ブランドのPRに努めてきました。その結果、全国の百貨店から声がかかるようになり、北海道から九州まで、豊岡鞄フェアのスケジュールがどんどん埋まっているそうです。ある有名百貨店のフェアでは、イベントの売り上げ記録を塗り替える快挙も達成。噂が噂を呼び、現在は全国からバイヤーがひっきりなしに訪れている状況です。
オリジナルブランドのセレクトショップや、かばんのパーツだけを集めた専門店に加え、かばん職人を育成するスクールが併設されている「Toyooka KABAN Artisan Avenue」。アルチザンという拠点施設ができ、カバンストリートへ人の流れが生まれたことで、目に見えて変化が現れたてきました。その取り組みは2014年度のグッドデザイン賞を受賞するなど、かばんを核とした全国でも類のないまちづくりが今、注目を集めています。
― 自分から行動する
順風満帆な船出とみえるアルチザンプロジェクト。しかし、地元住民は「豊岡の強みがまだまだうまく表現できていない」という印象があるのではと林さんは感じています。さらなるPRに向けて、様々な取り組みが行われているそうです。
「かばんの4大産地の中で、豊岡が今1番元気ですよ。ここは職人も設備も揃っている。豊岡のかばん産業の好調さやショールームとしてのアルチザンができた流れで、オリジナルかばんの制作に挑戦しようという試みも増え、ますます元気になっているのでは」と話します。
豊岡といえば「かばん」。この図式を確かなものにしようと、力を注いでいる鞄業界。林さんもその夢の実現に向けて、まちづくりに汗を流しています。「名前を聞いただけで、よいものだと認識してもらえる、それがブランド力。豊岡のかばんブランドを確立していきたいです」と林さん。 1000年の歴史を誇る「豊岡のかばん」が、どのような化学変化を起こすのか、今後も目が離せません。
LINK UP 林 健太
■Toyooka KABAN Artisan Avenue(トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー) [所]兵庫県豊岡市中央町18-10 [時]11〜18時[休]水曜 [問]0796-22-1709(豊岡まちづくり株式会社) (HP)http://www.artisan-atelier.net/ ■トヨオカ・カバン・アルチザン・スクール (HP)http://www.artisanschool.net/ |