起業や事業の創出を支援する朝来市和田山町竹田のASAGOiNG Garden KOUBAで、ポーセラーツサロン「MODERN GRACE」を営んでいる山本瞳さん。ポーセラーツとは、高品質な陶磁器を指す「ポーセリン」に「アートする」という意味で、シールのような転写紙を磁器に貼って焼き付けるクラフトです。大阪出身の山本さんは、10年ほど前に結婚を機に朝来市へ移住し、知り合いのいない新しい土地で、ふと出会ったのがポーセラーツでした。
「食器やハンドメイドが好きだったので、存在を知った瞬間、私にぴったりだと感じました。すぐにインストラクターの資格を取り、夢中でこの世界に飛び込んだのです」。と話す山本さん。
元々自宅でサロンを行っていた山本さんが工房を構えたいと思ったきっかけは、自宅サロンだとお店かどうかわからず、どうしても入りづらそうな雰囲気が出ていたことでした。初めての人は気軽に足を運びづらく、店舗を構えたいという気持ちがありました。そんな時に現在の工房、ASAGOiNG Garden KOUBAに募集がかかり、知り合いも含めて3店舗が入ることになりました。
今ではワークショップなども定期的に開催していて、インストラクター養成にも力を入れられています。
―世界にひとつの食器
(画像:<左>ポーセラーツ の作業風景 <右>常備している250種類以上の転写紙)
工房を持ってからの一番の変化は、初めての人も気軽に入れるようになったことだといいます。さらに自宅でしていた頃の依頼は、自分のためであったり、家で使うためのものがほとんどでしたが、現在はオーダーメイドの依頼が増えたそうです。
オーダーメイドでは、どんなもの、いつまで、誰が使うかなど、工房などでお茶を飲みながら、友人と語るようにヒアリングをします。話を聞いていくうちに、受け取る人についても知る機会になり、完成品を渡して終わりではなく、受け取った人は依頼者とどういう会話をして、どんな時間を過ごすかを想像しながら形にしてくそうです。
以前は「お客さんは食器が好きだからサロンに来てくれる」と思っていたそうですが、贈り物にしたい人の多さからそれだけではないということを実感するようになった山本さん。
「店舗になったことで『誰かにあげたい』という思いをもった人が入りやすくなったと思います。受け取る人の好みだけでなく、依頼者が本当に伝えたい気持ちを会話しながら引き出し、理解したいという思いが強くなりました。誰かのことを思ってデザインするので、物の先にある“相手のことを好きなんだな”という気持ちを大切にしたいですね」と話します。
ポーセラーツを通して、その人の好みだけでなく、相手が伝えようとしている意味をこちらも理解したいという思いが強くなり、人間の面白さを感じる日々だといいます。
ー思わず溢れる「かわいい!」の声
(画像:子どもの絵を使用したオリジナル転写紙によるポーセラーツ作品)
「でき上がった作品を見た瞬間、『かわいい!』と声が出ないお客さんはいません」と山本さんは笑います。今後は、子どもの作品や大切な写真をモチーフにした作品づくりにも、力を入れたいと考えているそうです。
写真をそのまま使用したポーセラーツはたくさんありますが、モチーフとして扱っているものは中々ありません。このようなオリジナル転写紙は加工の手間などがかかり、扱う作家が少ないからです。世界で一つだけの食器などを作り出せることが魅力のポーセラーツだからこそ、山本さんは写真の中に映り込んでいる愛おしい何かをモチーフとして扱い、日常で使えるものとして残したいといいます。
「扱っている磁器は丈夫で壊れにくく、食洗機にも対応しています。ぜひ日常使いしてください」。かわいいだけじゃなく大切な思いが込められた食器たち。毎日の食卓に、贈り物や思い出の品として、少し「特別」を加えてみてはいかがでしょうか。
LINK UP ポーセラーツ作家 山本瞳さん 《朝来市》
■MODERN GRACE Instagram:https://www.instagram.com/moderngrace_porcelarts/ |