但馬CULTURE VOL.40 地域とつくるいちご菓子


明治元年の創業以来、兵庫県養父市八鹿の地で長く愛されている菓子メーカー「菓心谷常」。創業150年を超える老舗が新たに挑戦したのは、甘酸っぱいいちごを使った洋菓子の開発でした。

― 老舗菓子メーカーを支える職人の技術

約60年前に発売された、銘菓「鮎のささやき」を食べたことのある人も多いでしょう。その味を今に伝えるのは、製造部長の長谷川拓也さん。その日の温度・湿度・素材の状態で全く違う仕上がりになるため、常に同じ味を提供できるようレシピを微調整する技は、職人ならではです。

長谷川さんは約10年前の入社当時、鮎のフォルムを作る職人たちの強いこだわりに驚いたといいます。生地やあんなど、時代に合わせて変化させながらも、鮎のささやきに対する想いやこだわりは約60年前から変わりません。
「業界の機械化が進むが、この成形は人の手でないと仕上がらない」と、今では長谷川さん自身が、その伝統を受け継ぐ職人の1人です。

―新しいいちご菓子への挑戦

一方、洋菓子部門を担当する製造部副部長の真狩正人さんは、自社栽培のいちごを使った「完熟いちご菓子研究所」のチーフパティシエも務めています。より新鮮で安全な素材を使いたいという社長の想いが、本格的ないちご栽培へと動かしました。収穫量の向上など課題はありますが、ファームで毎日収穫されるいちごは、味も香りも仕入れたものとは全く違います。試作を重ねた商品は、完熟いちごならではの濃厚な赤が光るよう、見た目にもこだわっています。

ハウス内のヒーティングシステムにはバイオマスボイラーを利用するなど、地域資源活用と、環境への配慮も欠かしません。また地元の養蜂農家と協力するなど、菓子づくりを通して地域と一体となっています。

―さらに広がる完熟いちご菓子

和菓子と洋菓子。仕上げる菓子は違っても、ものづくりにかける姿勢は同じです。彼ら2人の力を合わせたいちご菓子は、地元はもちろん遠方からも好評だとか。
「今までのお客様はもちろん、新しい谷常をより多くのお客様に知ってほしい」と、2人の職人は腕をふるいます。

看板商品である「宝石フロマージュ」を筆頭に、シーズンごとに広がりを見せる完熟いちご菓子研究所では、バレンタインに向け新たに6種類目の商品開発に熱が入っています。
「やっぱり美味しかった、次も買おうといってもらいたい」。作業ひとつひとつに想いを込める職人の魂が、伝統と挑戦の味を作り出しています。

LINK UP 地域とつくるいちご菓子

株式会社 谷常製菓 完熟いちご菓子研究所
[所]
兵庫県養父市八鹿町八鹿1500
[問]0796-92-2000(谷常 本店)
(HP)http://www.kanjyukuichigo.com/

 

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