但馬CULTURE VOL.17  湯村の温泉力・ジオの恵み


山陰の名湯、兵庫県新温泉町にある「湯村温泉」は、今から150年前に慈覚大師が開湯したと伝わります。源泉「荒湯」からは98度の高熱泉が毎分470リットルも湧き出、湯けむりが立ち上がる独特の温泉情緒は、数多くの観光客を楽しませてきました。

― 大地から湧き出る恵み

荒湯をはじめ湧き出す温泉については、区民の共有財産という認識の下に、長年に渡り大切に管理されてきました。温泉街の全家庭には天然温泉が配湯されている他、役場や学校といった公共施設でも温泉を利用することができます。また、山陰海岸ジオパークのスポットでもあり、温泉卵などのジオ体験ができるなど、源泉が地元以外の人にも広く開放されていることは、全国的に見ても珍しことです。さらに家庭に配湯されるまでは荒湯に洗濯場もあり、各旅館では温泉熱を利用した乾燥場もあったそう。温泉が生活の一部となっており、人々は様々な恩恵を受けてきました。

大切に守られてきた大地の恵み。地元では温泉の魅力をもう一度見直してみようと、多彩な取り組みがなされています。

― 湯村ならではの温泉活用

湯村温泉は、ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉と3つも成分が入っており、美肌の湯として知られています。この豊かな温泉成分を活かそうと、湯村温泉若女将の会である「ゆむらなでしこ」によって開発されたのが、温泉水ミストの化粧水「湯顔」です。温泉の効果を実感するため、源泉を100%使用しています。

肌に良いという成分を知ってもらうため、湯村の散髪屋さんでは、「温泉洗髪」を掲げてPRしています。皮膚の脂分を洗い流し、保湿効果にも優れている湯村温泉。散髪屋のご主人いわく、湯村の人は薄毛が少ないのだとか。温泉のパワーに驚かされるばかりです。

また、「ゆむらなでしこ」は、観光協会と連携して「荒湯湯たんぽ」を復活させました。暖房器具の普及とともに姿を消していた湯たんぽですが、自然環境保護運動の一環として取り組んだところ、観光客に大好評となりました。現在は各旅館でレンタルでき体への負担も少なく、電気器具を使わないエコなサービスとして人気を得ています。

― 活躍する温泉エネルギー

さらに湯村の温泉力は、目に見えない場所でも活用されています。湯村では暖房のみならず、気化熱を利用した冷房にも温泉を使用しています。公衆浴場の薬師湯では、風呂だけでなく、冷暖房やシャワー、駐車場の消雪にと、源泉を冷ます過程において、温泉を余すこと無く活用しています。レジャー施設のリフレッシュパークゆむらや一部の旅館では、約20年も前から同様の取り組みを行っているそうです。

温泉を活用した冷暖房はCO2が発生しません。節電が叫ばれる中、湯村では文化としてエコ活動を自然に行ってきました。今この「温泉力」をさらに有効活用しようと、新しい可能性を探る動きが盛り上がろうとしています。それが、新エネルギーとして注目を集める「バイナリー地熱発電」です。「バイナリー地熱発電」とは、低沸点を温泉熱で温め、液体から気体になるときの膨張圧でタービンを回して発電する仕組みのことです。温泉や蒸気など、比較的低温で以前なら発電に向かないとされていた熱源を使用でき、今後発電量と導入コストの問題が解決すれば、湯村をエコの町としてPRできると期待も高まります。

98度の高熱泉を上手に活用してきた湯村の人々。温泉力を活かした町づくりには、人が自然と共生していくヒントが隠されています。

LINK UP 湯村温泉

■湯村温泉
[所]兵庫県美方郡新温泉町湯98 [問]湯村温泉観光協会 0796-92-2000
(HP)http://www.yumura.gr.jp/
PICKUP