但馬STYLE VOL.11 今井 ひろこさん《香美町》


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 2010年に世界認定され、貴重な地質遺産を間近で体感できる「山陰海岸ジオパーク」。ジオパークとは、地球科学的に見て、貴重で美しい地質遺産を含む自然公園のことで、兵庫県香美町もそのエリアの一部です。「NPO法人たじま海の学校」副代表の今井ひろこさんは、もともと大阪出身で但馬の海に魅せられた一人。現在は山陰海岸ジオパーク公認ガイドも務めており、明るく元気に話す姿が印象的な今井さんをご紹介します。

― 子どもたちに夢や希望を持ってもらえるような活動を

 大阪府生まれの今井ひろこさん。但馬に嫁いでくる前は化学会社の研究員として働く日々で、週末には趣味のダイビングをするため和歌山の海へ行っていました。ある時、たまたまダイビングスクールのインストラクター募集の広告を見て香美町香住の海にも訪れるようになりました。「但馬の海はどこにも負けない美しさがある」と、潜る度にその美しさに魅了されたという今井さん。このきれいな海を守って、次世代へ引き継いでいきたいと思うようになります。

 2007年、今井さんは“子どもたちを香住の海に迎えたい”という想いから、ダイバー仲間だった現在のご主人である学さんと共に「NPO法人たじま海の学校」を立ち上げました。その翌年、学さんとの結婚を機に香住へ。たじま海の学校では、シュノーケリングのほか、海洋生物の観察や救助活動まで海の素晴らしさや自然と共存のために必要なことを教えています。

 但馬の海側にある小学校の児童たちを対象に行っている「海辺の漂着物調査」では、この活動を通して印象深い出来事がありました。それは参加した児童の一人が、“但馬の海の魚と環境を守っていく学者になりたい”という夢を夏休みの作文に書いてくれたこと。「自分たちがやってきたことが、子どもたちに夢や希望を持ってもらえる活動であると自信が持てました」と、今井さんはうれしそうに話してくれました。

― 但馬には美味しいもの、美しい景色がたくさん

 山陰海岸ジオパークの世界認定を目指していた2010年頃、京都府から兵庫県、鳥取県にまたがるエリアの中で、香美町は今ひとつ盛り上がりに欠けていたと話す今井さん。“民間から盛り上げていこう”と、竹野スノーケルセンターで活動されているガイドの福原さんから誘いを受け、ジオパークの普及活動に関わるようになりました。

 現在は13名しか認定されていない「第2種山陰海岸ジオパークガイド※」を務める今井さん。(※山陰海岸ジオパークに関して深い知識を持ち、山陰海岸ジオパークを代表するガイドとして全国大会等でも活躍する)ガイドを始める前は、香美町をくまなく回ったことがない“箱入り嫁”で、「何もないところに来てもうた!」と後悔することもありました。ですが、実際にジオパークに関わりガイドをするようになると、香美町にスキー場が4カ所もあることや景色のよい林道が多いことも知り、地域に対しての魅力を再発見しました。生きた但馬牛を見たのもガイドになってからそうです。長年に渡り、但馬の地で育まれてきた「良いもの」の裏側には、しっかりとした科学的背景と素晴らしき風土があることを知ったと話します。「但馬には美味しいもの、美しい景色、素敵な住民、四季が豊かであることを身をもって感じます」と、今井さんはその魅力を語ってくれました。

 また、地元住民が地域の魅力を再認識するきっかけとリピーターの増加を目指し、地域の歴史や伝承を紹介する観光ガイド「香美がたり」の養成や、ガイドブックの作成にも取り組んでいます。ガイドの育成や講演会などを行い、「ジオのあるまち」をPRする活動を積極的に行っています。

 「言葉や想いが伝わらなければ楽しさも伝わらない。小学校6年生に分かるように説明しなさいと教えられました」。歴史が好きな人や花に興味がある人など、多種多様のお客さんを案内をするガイドの仕事では、会話の中からお客さんがどういうことに興味があるのかを見極め、それぞれのお客さんに合わせた説明を心がけています。

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― ジオパークは「ここならでは」を発掘する最良のツール

 2014年9月に、鳥取地域が一部拡大されて、世界ジオパークに再認定された「山陰海岸ジオパーク」。地形・地質の保護保全活動やジオパーク学習、地元住民の活動など、様々な努力の積み重ねが今回の再認定に結びつきました。

 「世界認定された当初はまだ地元でも“ジオパークって何?”という人が多かったけれど、今では知らない人はほとんどいなくなりました。再認定に向けての活動がよいきっかけになったと思います。まち歩きの回数も増やして、県外の方たちにどんどん来ていただき、ジオの魅力をもっと伝えていきたいです」と、今井さんはさらなる高みを目指して活動しています。

 ジオパークはここにしかないものを発掘するには最良のツール。この土地の特徴や成り立ちを知って、観光だけでなく、家を建てる時や商売などにも役立ててほしいと話す今井さん。今後は女性の2種ガイドを増やして、女性でも来やすい環境作りにも力を入れていきたいとのこと。地域の宝を大切に、人と人をつなぐ活動はまだまだ続いていきます。

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LINK UP 今井 ひろこ

■特定非営利活動法人たじま海の学校
[所]兵庫県美方郡香美町香住区訓谷316 [問]0796-39-4811

(HP)まち歩きガイド「香美がたり」http://kamigatari.net/(FB)香美がたりFacebook

 

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