茅葺き職人の三木宏祐さん(1)


『夢但馬2014』事務局です。
いま「茅葺き」を仕事にしている事業所は日本に約10社、職人は100人くらいしかいない。でも、オランダでは茅葺きの会社は400以上あって職人も多くいる。オランダでは茅葺きの良さが見直されて、工法や基準も新しく整備されて、新築の茅葺き住宅がどんどん建ってるんすよ。視察に行かんとあかんなあって思ってます。
キリリと引き締まった日焼けした顔で話すのは、豊岡市在住の茅葺き職人、三木宏祐さん(1982年生まれ)です。

三木さんは兵庫県相生市生まれ、やんちゃな子どもでした。野球が得意で高校から奈良の天理市へ行きますが、この頃から「環境」のことをずっと考えていました。衣食住を本当に納得するものとするために何ができるのか。水と森の関係を学ぼうと吉野で林業の研修を受けたり、四国を旅したりする中で、三木さんは自分の哲学と感性を磨きます。

そして、ある日、ふと足を運んだ茅葺きの縄文遺跡の中で、ビビビーっと魂が震えるような体験をするのです。茅葺きが醸し出す独特の波動、中に入ったときの心と体を包み込んで充電させるような感覚、人が毎日眠る「家」に必要なのはこの感じだ! このとき、ずっと考えてきた「衣食住」の答えの一つが三木さんの胸にストンと落ちてくるのです。

三木さんは早速行動します。京都府美山町なら茅葺き職人がいるんじゃないか。なんのツテもありませんでしたが、とにかく美山町に行きます。車から降りると神社がありました。三木さんは足の赴くままに本殿の前に行って手を合わせます「良きご縁がありますように」。さらに歩いて行くと、また別の神社がありました。同じように手を合わせて祈ります「良きご縁がありますように」。そしてさらに歩いていくと、また別の神社がありました。神社ばかり3つも行き当たるなんて、どうなってるんやろうと思いながらも、また手を合わせ「良きご縁がありますように」と祈ります。そして境内を出たところで初めて男性と会いました。三木さんは尋ねました。「茅葺きの職人さんはここにいますか?」

するとその男性は「そこや」とすぐ隣の建物を指さしました。三木さんはその建物に近づいて行きました。そうするとドアがすっと開いて、中から女性が出てきました。三木さんが何か言う前に、その女性がにこっとして三木さんに声をかけました、「あ、茅葺職人さん、希望?」 三木さんは「はい」とうなずきました。するとその女性はついておいでと歩き出しました。

連れて行かれたのは、なんと茅葺きの親方のところでした(女性は親方の奥さんだったのです)。三木さんは自分の思いを親方に伝えました。親方は一言、「いつでも来たらええ」と三木さんに言います。三木さんはこの日の帰り道、導かれていることの不思議をかみしめながら、うれしくて、車の窓を全開にして、大声で「うぉぉーー」と叫ばずにはいられませんでした。

※今回は特別に2回に分けてお届けします。後半は次回!

美山茅葺株式会社HP
http://www.cans.zaq.ne.jp/miyama-kayabuki/index.html