但馬CULTURE VOL.41 古民家を蘇生させた在宅看護施設


2017年4月に開所した、豊岡市日高町にある看護小規模多機能型居宅介護事業所「リガレッセ」。古民家を利用した介護事業所という、全国でも珍しい看護センターです。敷地内に古民家カフェも併設し、通い・訪問・宿泊・訪問看護に加え、終の住処として終末期看護にも対応しています。

― 人と場所をつなぐ古民家

「『リガレッセ』とは、ラテン語のリガーレ(つながる)とエッセ(存在)をつなげた造語です」
そう教えてくれたのは、京都出身である代表者の大槻恭子さん。シンボルマークのボタンボウフウが持つ花言葉『長い時間のつながり』のように、命を大切にし人と場所を繋ぎたいという想いが込められています。

看護師として働いていた大槻さんは、移住先を探していた際この古民家に出会いました。150年前に庄屋として建てられた建物は年季が入っていましたが、一目見てこの家が持つ力に魅了されたといいます。
「訪問看護師として働いていましたが、高齢化を迎えるこれからの在宅医療には“看護師がベッドを持つ”ような在宅看護が必要だと感じ、リガレッセの起業を思い立ちました」と大槻さん。高齢者を中心に、地域の健康と暮らしを支える施設が誕生しました。

―人々を魅了する「家」の力

介護施設への改築は、海外でも活躍する建築家の有馬裕之氏のプロデュースで作り上げられました。特徴的なスロープ屋根では、現代技術を駆使したシャープな鉄骨と、魅力ある木質屋根が融合しています。

家自体が持つパワーに魅了された施設利用者からも、この場所を気に入ったとの声が多く寄せられました。本物の「家」が持つ温かみや気持ち良さは、利用者はもちろんスタッフにも好評です。古い家屋はそれだけの力を持っていると、携わった人々は口を揃えます。

―「蘇生」が意味すること

施工を手がけたのは、但馬一宮としても知られる出石神社や国道482号の蘇武トンネルなど、但馬に欠かせない建造物の施工に携わっている川嶋建設。明治22年創業の同社は、優良な古民家をリノベーションし蘇らせる「古民家蘇生」も得意としています。

川嶋建設が初めて古民家蘇生を手がけたのは平成8年。阪神淡路大震災で半倒壊した明石市の卜部邸でした。社内で研究チームを立ち上げるところから始め、取り壊し寸前だった古民家に対し、「再生」ではなく人が住める家として「蘇生」を行いました。窓枠の色まで細部にこだわった出石の永楽館の復原や、TV番組で放送された篠山市の古民家蘇生も含め、現在では約50棟を手がけています。

―但馬を生き返らせる匠の技

「100年以上前に建てられた民家の柱や梁などは立派なものが多く、用途を問わず様々な部位に再利用できます」とは、川嶋建設建築工事部工事課の森垣さん。降雪量の多い但馬の民家は骨組みが強く、良質な木材が多く使用されているといいます。

年季の入った建材の個性を活かす古民家蘇生は、決して簡単ではありません。それでも原風景を彩る日本家屋は、但馬にとって貴重な資源です。但馬を生き返らせる匠の技は、次の100年後を見据えています。

LINK UP 古民家を蘇生させた在宅看護施設

■日本財団在宅看護センター/在宅ホスピス「リガレッセ」
[所]
兵庫県豊岡市日高町荒川310
[問]0796-44-1500
(HP)http://rigaresse.or.jp/

 

PICKUP